当事者が訴訟の進行中に在監者となり、裁判所にその旨の届出をしなかつた場合でも、その者の住所においてその者を受送達者としてされた送達は、無効である。
訴訟の進行中在監者となつた当事者に対する送達
民訴法168条,民訴法169条
判旨
在監者に対する判決正本の送達は、監獄の長に宛てて行わなければならず、在監者の自宅において本人を受送達者としてなされた送達は無効である。裁判所は、控訴状に在監中である旨の記載がある等、送達の有効性に疑いがある場合は職権調査を尽くすべきである。
問題の所在(論点)
在監者に対して、監獄の長を通さず自宅において本人受領の形で行われた送達の効力、および控訴期間の遵守に関し裁判所が負う職権調査義務の範囲。
規範
1. 民事訴訟法上の送達は、受送達者の住所等において行うのが原則であるが、受送達者が在監者である場合には、監獄の長(現:刑事施設の長)に宛てて行わなければならない(現行民訴法102条参照)。 2. 在監中である事実がある以上、その旨の届出の有無にかかわらず、在監者の自宅において本人を受送達者としてされた送達手続は無効である。 3. 控訴提起の適法性(期間遵守)は職権調査事項であり、疑いがある場合には十分な調査を尽くす必要がある。
重要事実
第一審で敗訴した被告(上告人)に対し、第一審判決正本が昭和50年2月8日に自宅で本人に直接交付されたとする郵便送達報告書が存在した。上告人が同年2月23日に郵便で控訴を申し立てたところ、原審は控訴期間(2週間)を1日徒過した不適法なものとして却下した。しかし、上告人が提出した控訴状には「府中刑務所在監中」との記載があり、また記録上、第一審の途中から出頭しなくなっていた事実が存在した。
あてはめ
上告人が提出した控訴状に「在監中」との明記があり、かつ第一審の審理状況からも在監の蓋然性が認められる。このような場合、控訴期間を僅か1日徒過している点について、送達手続自体の瑕疵(特別の事情)を疑うのが自然である。それにもかかわらず、原審が十分な職権調査を尽くさず、送達報告書の記載のみを根拠に控訴期間徒過と判断したことは、審理不尽・理由不備の違法がある。もし送達当日に在監中であれば、自宅への送達は無効であり、控訴期間は進行しない。
結論
控訴期間徒過を理由に控訴を却下した原判決を破棄し、在監の事実および送達の有効性について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
訴訟要件の職権調査義務を具体化した判例である。答案上では、期間遵守の有無が争点となる場面で、送達の不適法(102条違反)を指摘する際の根拠として活用する。特に、書面上に在監や入院等の事実が表れている場合に、裁判所が漫然と形式的な送達報告書のみを信頼してはならないとする論理に有効である。
事件番号: 昭和24(オ)15 / 裁判年月日: 昭和25年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所の所在地に住所等を有しない訴訟代理人が送達受取人の届出を怠った場合、民事訴訟法上の規定に基づく書留郵便による発送をもって、現実に書類が到着したか否かにかかわらず、発送時に送達があったものとみなされる。 第1 事案の概要:第一審裁判所(山口地裁下関支部)の所在地に住所等を有しない被告代理人弁護…