一、不動産取得税の納税者が同税の賦課処分の取消訴訟において固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格が客観的に適正な価格と異なると主張して課税標準たる価格を争うことはできない。 二、地方税法七三条の二一第一項が憲法三二条、七六条二項違反の問題を生ずるものでないことは、最高裁昭和二八年(オ)第六一六号同三〇年三月二三日大法廷判決(民集九巻三号三三六頁)の趣旨に徴し明らかである。
一、不動産取得税の納税者が同税の賦課処分の取消訴訟において固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格が客観的に適正な価格と異なると主張して課税標準たる価格を争うことの可否 二、地方税法七三条の二一第一項の合憲性
地方税法73条の21第1項,憲法32条,憲法76条
判旨
不動産取得税の課税標準につき、地方税法73条の21第1項但書の特別の事情がない限り、道府県知事は固定資産課税台帳の登録価格により決定すべきであり、納税者が賦課処分取消訴訟において登録価格が客観的時価でないと争うことはできない。
問題の所在(論点)
不動産取得税の賦課処分取消訴訟において、納税者は固定資産課税台帳に登録された価格が客観的な適正時価ではないことを理由に、課税標準となる価格の不当性を争うことができるか。また、登録価格によらなければならないとする法73条の21第1項は憲法に違反するか。
規範
不動産取得税の課税標準となる不動産の価格について、地方税法(以下「法」という。)73条の21第1項は、固定資産課税台帳に価格が登録されている不動産については当該価格によるべきものとし、増築、改築、損壊その他「特別の事情」がある場合にのみ、登録価格によらないことができると規定する。これは、固定資産税と不動産取得税の評価の統一と徴税事務の簡素化を図る趣旨である。したがって、法73条の21第1項但書の特別の事情がない限り、道府県知事は自ら適正な時価を認定することなく、専ら登録価格により決定すべきである。たとえ登録価格が客観的な適正時価と一致していなくても、上記但書の程度に達しない以上、当該価格による賦課処分は適法である。
事件番号: 昭和45(行ツ)82 / 裁判年月日: 昭和50年12月18日 / 結論: 棄却
一、地方税法七三条の二一第一項にいう「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産」とは、不動産を取縛した日の属する年の一月一日における当該不動産の価格が固定資産課税台帳に登録されている不動産を指す。 二、基準年度に不動産を取得した場合において、右取得時までに基準年度に係る当該不動産の価格の決定及び当該価格の…
重要事実
上告人(納税者)は、不動産取得税の賦課処分を受けた際、その課税標準となった固定資産課税台帳の登録価格が、取得時における客観的な適正時価と一致していないと主張した。上告人は、法73条の21第1項が登録価格を基礎とすることを強制し、納税者が不服を申し立てる道を閉ざしている点は、憲法32条(裁判を受ける権利)および76条2項(特別裁判所の禁止等)に違反すると主張して、賦課処分の取消しを求めた。
あてはめ
法は、固定資産税の課税標準となる登録価格の決定を独立した行政処分とし、納税者がこれを通告・公示等の手続を経て争う機会を別途設けている。また、法73条の21第1項は課税標準を定める実体規定であり、不服申立を禁止する規定ではない。本件において、家屋に法73条の21第1項但書の「特別の事情」があるとは認められず、登録価格が客観的時価と多少の乖離があったとしても、それは同条但書の適用を認めるべき事情には当たらない。したがって、道府県知事が登録価格に基づき課税標準を決定したことに違法はなく、取消訴訟においてその価格の当否を争うことは認められない。
結論
納税者は、法73条の21第1項但書所定の特別の事情がない限り、取消訴訟において登録価格が客観的な適正時価でないと主張して課税標準を争うことはできない。また、同条項は立法政策の範疇に属し、憲法に違反しない。
実務上の射程
本判決は、固定資産税の評価額(登録価格)が他の税目の課税標準に流用される仕組みの適法性と、その争訟方法を限定したものである。答案上は、評価の基礎となる登録価格自体の違法(評価方法の誤り等)は固定資産課税台帳への登録段階で争うべきであり、その後の賦課処分段階では、原則として「特別の事情(増改築等)」の有無のみが争点となる点に注意が必要である。課税要件明確主義や租税法律主義の文脈での憲法適合性の議論にも活用できる。
事件番号: 平成4(行ツ)196 / 裁判年月日: 平成6年4月21日 / 結論: 破棄自判
地方税法七三条の二一第一項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」とは、当該不動産につき、固定資産税の賦課期日後に増築、改築、損壊、地目の変換その他特別の事情が生じ、その結果、固定資産課税台帳に登録された価格が当該不動産の適正な時価を示しているものということができないため、右登録価格を不動産取得税の課税標準と…
事件番号: 平成13(行ヒ)224 / 裁判年月日: 平成16年10月29日 / 結論: 破棄差戻
1 地方税法73条の21第2項に規定する不動産についてされた不動産取得税の賦課決定は,同項に基づき固定資産評価基準によって決定されたその課税標準となるべき価格が同法73条5号にいう適正な時価を上回る場合には,違法となる。 2 地方税法73条の21第2項に規定する不動産について同項により決定されるべき「不動産取得税の課税…
事件番号: 昭和28(オ)616 / 裁判年月日: 昭和30年3月23日 / 結論: 棄却
一 土地台帳若しくは土地補充課税台帳に一月一日に所有者として登録されている者は、納期において所有権を有しなくてもその年の四月一日に始まる年度の固定資産税の納税義務を負う。 二 地方税法第三四三条および第三五九条は憲法第一一条、第一二条、第一四条、第二九条、第三〇条、第六五条に違反しない。
事件番号: 昭和51(行ツ)13 / 裁判年月日: 昭和51年10月12日 / 結論: 破棄自判
昭和三八年法律第八〇号による改正前の地方税法のもとにおける不動産取得税の賦課権の消滅時効は、当該不動産の所有権取得の日を基準としてこれを起算すべきであり、右所有権取得についての登記又は申告等の日を基準とすべきではない。