地主の承諾をえて土地賃借権の譲渡を受け、同地上に所有する建物につき登記を経由して建物保護に関する法律一条による第三者に対する対抗力を備えた者は、右土地の一部についての賃借権の二重譲渡を受け、これに建物を建ててその占有をなす者に対し、直接その建物の収去、および土地の明渡を請求することができる。
対抗力を有する土地賃借権と妨害排除請求の許否
民法601条,民法612条,民法3篇(債権)1章(総則)2節(債権の効力),建物保護に関する法律1条
判旨
借地上の建物の所有権移転登記を完了した賃借人は、その後当該土地の所有権を取得した者に対し、借地借家法10条1項(旧建物保護法1条)に基づき、土地賃借権を対抗することができる。この対抗力に基づき、賃借人は自己の占有を妨害する者に対し、建物収去土地明渡等の妨害排除請求権を行使することが認められる。
問題の所在(論点)
借地上の建物登記による賃借権の対抗力が、対抗力取得後に土地所有権を取得した者に対して認められるか。また、その対抗力に基づき建物収去土地明渡請求をなしうるか。
規範
借地上の建物につき所有権移転登記を経由したときは、その登記をもって土地賃借権の対抗力とする。この対抗力を備えた賃借人は、その後に土地の所有権を取得した第三者や、対抗力を備える前に正当な権原を取得していない占有者に対し、賃借権に基づく妨害排除請求権として建物収去土地明渡を請求することができる。
重要事実
被上告人(賃借人)は、土地所有者Eから本件宅地を賃借していたDから、昭和29年5月に本件家屋を買い受けるとともに、Eの承諾を得て土地賃借権を譲り受けた。同年10月11日、被上告人は家屋の所有権移転登記を完了した。一方、上告人らの被承継人Fは、昭和28年4月にDから一部土地の賃借権を譲り受け(対抗力は未具備)、昭和29年6月頃に本件倉庫を建築して占有を開始し、昭和39年7月にEから当該土地の所有権を譲り受けて登記を完了した。被上告人は、Fに対し、賃借権に基づき本件倉庫の収去と土地明渡しを求めた。
あてはめ
被上告人は昭和29年10月11日に本件家屋の登記を完了しており、この時点で土地賃借権の対抗力を取得したといえる。これに対し、Fが土地の所有権を取得し登記を経由したのは昭和39年7月であり、被上告人の対抗力取得より後である。また、FがDから譲り受けた賃借権についても、被上告人の対抗力取得以前に対抗力を備えた事実は認められない。したがって、Fは土地所有権および先行する賃借権のいずれをもってしても、対抗力を有する被上告人に対抗することができない。この場合、被上告人は正当な賃借権者として、権利を侵害するFに対し妨害排除請求権を行使しうる。
結論
被上告人は土地賃借権につき対抗力を有しており、その後土地所有権を得たFに対し、賃借権に基づく妨害排除請求として、本件倉庫の収去および土地の明渡しを請求することができる。
実務上の射程
借地借家法10条1項(旧建物保護法1条)の対抗力の効果を、単なる防御的な抗弁にとどめず、土地所有者等に対する攻撃的な妨害排除請求の根拠としても認めた点に実務上の意義がある。答案上は、対抗力の先後関係を確認した上で、賃借権に基づく物権的請求権(妨害排除請求)の構成に活用すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)658 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 破棄差戻
賃借権が債権であるというだけの理由で、賃借権に基く妨害排除の請求を排斥するのは違法である。
事件番号: 昭和35(オ)28 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人の地位を承継した者が、合意解約の成立していない賃貸借物件の賃借権の存在を否認している場合には、賃借人は賃貸人に対し賃借権の確認を求める利益を有する。また、賃貸人の買受の意図がどうあれ、適法に存続する賃借権を主張することは権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は本件宅…