免責的債務引受契約が債権者と引受人間の契約によつて成立したときは、第三者の設定した質権は特段の事情のないかぎり消滅し、引受人に移転することはない。
免責的債務引受契約の成立と第三者の設定した質権の移転の有無
民法514条,民法3編1章4節(債務引受)
判旨
債権者と引受人間の契約による免責的債務引受がなされた場合、第三者が設定した質権は、特段の事情がない限り、消滅して引受人に随伴することはない。
問題の所在(論点)
債権者と引受人間の契約により債務引受がなされた場合、物上保証人が設定した質権は、新債務(引受人の債務)に随伴するか。民法472条の4(改正前518条類推等)の解釈が問題となる。
規範
債権者と引受人間の契約によって債務引受(免責的債務引受)が成立した場合、第三者が設定した質権は、原則として引受人に移転せず消滅する。ただし、担保提供者が引き続き担保に供することを承諾した等の「特段の事情」がある場合はこの限りではない。
重要事実
上告会社(債権者)は、D社に対し160万円の貸金債権を有し、その担保として被上告人B(物上保証人)所有の株式に質権の設定を受けた。その後、D社の債務不履行が生じたが、上告会社は第三者であるE社の代表者Fとの間で、残存債務100万円をE社が引き受ける旨の契約を締結した。この際、上告会社の意思として、本件株式を債務引受に伴う新たな担保から除外していた。Bは、債務引受により本件株式の質権は消滅したと主張して、株主権の確認等を求めた。
あてはめ
本件では、上告会社(債権者)とF(引受人代表者)の間で債務引受契約が成立している。第三者たるBが設定した質権については、債務の主体が交代することにより、保証的性質を有する担保の負担を継続するか否かは担保提供者の意思に依存すべきである。本件において、原審の認定によれば、債権者である上告会社自身が本件株式を引受後の担保から除外する意思を有していた。したがって、担保提供者が継続を承諾した等の「特段の事情」は認められない。
結論
債務引受契約の成立以後、本件株式は質権の拘束から解放され、Bの請求は認められる(上告棄却)。
実務上の射程
免責的債務引受における担保の随伴性に関するリーディングケースである。民法472条の4第1項但書は、引受人以外の者が設定した担保について、その者の承諾がない限り消滅する旨を明文化しており、本判決はこの法理を確認するものである。答案上は、債務引受の法的性質(免責的か併存的か)を確定した上で、担保提供者の承諾の有無という「特段の事情」を検討する枠組みで使用する。
事件番号: 昭和61(オ)965 / 裁判年月日: 昭和63年3月15日 / 結論: 破棄自判
株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨定款に定められているのに、競売による株式取得につき取締役会の承認がない場合には、競売前の株主が、なお会社に対して株主としての地位を有する。
事件番号: 昭和42(オ)1319 / 裁判年月日: 昭和43年4月12日 / 結論: 棄却
取締役・監査役の選任決議を内容とする株主総会決議の不存在確認の訴は、右取締役・監査役が退任した後においては、現在の法律関係ではなく即時確定の利益を欠くものである。