株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨定款に定められているのに、競売による株式取得につき取締役会の承認がない場合には、競売前の株主が、なお会社に対して株主としての地位を有する。
競売による株式取得につき取締役会の承認がない場合と会社に対し株主としての地位を有する者
商法204条1項,商法204条ノ2,商法204条ノ5
判旨
譲渡制限株式が取締役会の承認を得ずに競売により譲渡された場合、その譲渡は会社に対する関係では効力を生じず、会社は依然として譲渡人を株主として取り扱う義務を負い、譲渡人も会社に対して株主の地位を主張できる。
問題の所在(論点)
譲渡制限株式が取締役会の承認を得ずに競売(強制執行等)により譲渡された場合において、会社に対する関係で株主の地位を有するのは、譲渡人(旧株主)か譲受人(競落人)か。
規範
譲渡制限株式が取締役会の承認を得ずに譲渡された場合、当該譲渡は当事者間では有効であるが、会社に対する関係では効力を生じない(相対的無効)。この理は、会社にとって好ましくない者が株主となることを防止するという譲渡制限の趣旨から、任意譲渡のみならず競売による譲渡の場合にも等しく妥当する。したがって、会社との関係では依然として譲渡人が株主としての地位を保持し、会社は譲渡人を株主として取り扱う義務を負う。
重要事実
上告人は被上告人(会社)の株式を保有していたが、当該株式は競売によりD社に落札され株券も交付された。被上告人の定款には株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあったが、D社は商法上の承認請求手続を行わなかったため、株主名簿には依然として上告人が株主として記載されていた。しかし、被上告人は上告人の株主権行使を拒絶したため、上告人が株主権の確認等を求めて提訴した。
事件番号: 昭和47(オ)91 / 裁判年月日: 昭和48年6月15日 / 結論: 棄却
一、定款をもつて株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨定められている場合に、その承認をえないで株式が譲渡されても、右株式の譲渡は、譲渡当事者間においては有効であると解すべきである。 二、株式を譲渡担保に供することは、商法二〇四条一項にいう株式の譲渡にあたると解すべきである。
あてはめ
本件株式には譲渡制限が付されているところ、D社による競落につき取締役会の承認がなされていない。承認のない株式譲渡は会社に対する関係では効力を生じないため、たとえ競売であっても、会社との関係ではD社への地位の移転は認められない。そうである以上、会社との関係では依然として上告人が株主としての地位を保持しているといえる。被上告人は上告人を株主として取り扱う義務があるにもかかわらずこれを拒絶しているが、上告人は被上告人に対し自己がなお株主であることを主張できると解される。
結論
上告人は依然として本件株式の株主であり、会社は上告人が株主総会において権利を行使することを妨害してはならない。
実務上の射程
譲渡制限株式の無承認譲渡における「相対的無効」の原則が、競売等の強制執行手続による取得にも及ぶことを明示した。会社法下の実務においても、承認を得ていない競落人が会社に対し議決権行使等を求めてきた際、会社側がこれを拒絶し、名簿上の書き換えを認めていない前株主を株主として扱う正当性を裏付ける理論的支柱となる。
事件番号: 昭和33(オ)1061 / 裁判年月日: 昭和36年12月14日 / 結論: 棄却
昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二〇四条第一項但書に基き、株式会社の定款中に存する「取締役会の承諾なくしては株式を譲渡することを得ない」旨の規定は、会社の清算手続中はその効力を停止されるものと解すべきである。
事件番号: 平成1(オ)1006 / 裁判年月日: 平成5年3月30日 / 結論: 棄却
一 代表取締役が取締役と認めていない者は、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律二四条一項にいう取締役に当たらない。 二 いわゆる一人会社の株主がした株式譲渡は、定款所定の取締役会の承認がなくても、会社に対する関係においても有効である。
事件番号: 昭和42(オ)1293 / 裁判年月日: 昭和43年10月17日 / 結論: 破棄差戻
株主総会決議無効確認の訴において、原告が自己の株主であることを立証するために同人名義の株券を書証として提出した場合であつても、その提出が二審においてはじめてされたものであるうえ、右株券には同人名義の白地式裏書があり、同人がこれを他に譲渡して一審当時はこれを所持していなかつたことを窺わせる判示の如き証拠があるときには、こ…