二審が、当事者適格を欠くという理由で訴を却下した一審判決を違法としながら、本案について証拠調をし、原告の請求は理由がないと判断して控訴棄却の判決をすることは許されない。
二審が訴を却下した一審判決を違法としながら本案について証拠調をし原告の請求は理由がないと判断して控訴棄却の判決をすることは許されるか
民訴法588条
判旨
第一審が訴えを不適法として却下した場合、控訴審が訴えを適法と判断したとしても、不利益変更禁止の原則を理由に控訴を棄却して請求棄却の実質的効果を認めることはできず、第一審判決を取り消して差し戻すべきである。
問題の所在(論点)
第一審が訴えを不適法として却下したのに対し、控訴審が訴えを適法と判断した場合において、不利益変更禁止の原則を理由に控訴を棄却(事実上の請求棄却と同様の処理)をすることが許されるか。民事訴訟法307条(旧388条)の必要的差戻しの適用の可否が問題となる。
規範
第一審が当事者適格の欠如等を理由に訴えを却下した判決(訴訟判決)に対し、原告が控訴した場合において、控訴審が訴えを適法と判断したときは、第一審において本案の審理判断が全くなされていない以上、民事訴訟法(現307条、旧388条)に基づき、第一審判決を取り消して事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。
重要事実
第一審は、上告人(原告・控訴人)らに当事者適格がないとして、本訴を不適法として却下した。これに対し上告人らが控訴したところ、原審(控訴審)は、上告人らの当事者適格を認め、第一審の判断は誤りであるとした。しかし、原審は本案について証拠調べをした結果、請求には理由がないと判断した。その上で、請求棄却の本案判決は訴え却下判決よりも原告に不利益であり、不利益変更禁止の原則に抵触するため、結論として控訴を棄却して第一審の訴え却下判決を維持した。
あてはめ
第一審判決は当事者適格の有無という訴訟要件のみを審理し、本案そのものの当否については何ら審理判断を加えていない。このような場合、控訴審が独自に本案審理を行い、不利益変更禁止の原則(民訴法304条)を名目に控訴棄却という形で請求棄却の実質を維持することは、第一審における審級の利益を奪うものであり、民事訴訟法307条(旧388条)の規定に反する。したがって、第一審判決は取り消されるべきであり、事件を第一審に差し戻すべきである。
結論
原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。本件を第一審裁判所である東京地方裁判所に差し戻す。
実務上の射程
訴訟判決から本案判決への変更が不利益変更にあたるかという議論よりも、本案の審理が未了である場合の「審級の利益」と「必要的差戻し」の優先性を示す。答案上は、訴え却下判決に対する控訴において、控訴審が訴えを適法と判断した際の処理(307条本文)の根拠として用いる。
事件番号: 昭和24(オ)51 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: その他
管轄権を有しない上訴裁判所に上訴状が提出されたときは、これを管轄上訴裁判所に移送すべきである。