管轄権を有しない上訴裁判所に上訴状が提出されたときは、これを管轄上訴裁判所に移送すべきである。
管轄権を有しない上訴裁判所に上訴状が提出された場合の処置
民訴法30条,民訴法367条1項
判旨
管轄違いの裁判所に控訴状が提出された場合、当該裁判所は管轄権のある裁判所に移送すべきであり、これを第一審裁判所に廻送して控訴期間経過後に受理させた手続は違法である。
問題の所在(論点)
管轄違いの裁判所に控訴状が提出された場合、当該裁判所は移送の裁判を行う義務があるか。また、移送を行わずに書類を廻送した結果として控訴期間を経過した不利益を控訴人に帰せしめることができるか。
規範
訴訟がその管轄に属しない場合には、裁判所は、申立てにより又は職権で、これを管轄権のある裁判所に移送しなければならない(民事訴訟法16条1項参照)。この規定は、管轄違いの裁判所に控訴状が提出された場合にも準用されるべきであり、裁判所は移送の決定をなすべきであって、第一審裁判所等へ単に廻送し控訴期間の遵守を否定することは許されない。
重要事実
上告人(被告)は、第一審判決(昭和23年10月6日言渡、10月12日送達)に対し、控訴期間内である同年10月25日に広島高等裁判所へ控訴状を提出した。しかし、広島高裁は第二審としての管轄権を持たないにもかかわらず、移送の決定を行わず、控訴状を第一審の松山地方裁判所大洲支部に廻送した。第一審裁判所がこれを受理したのは控訴期間経過後の10月29日であったため、原審(高松高等裁判所)は本件控訴を不適法として却下した。
あてはめ
本件において、広島高等裁判所は管轄権を欠くのであるから、法に従い管轄権のある高松高等裁判所に移送すべきであった。それにもかかわらず、広島高裁が移送の裁判をせず、控訴状を第一審裁判所に廻送したことは違法である。この違法な手続によって控訴期間が経過したものとして扱われたことは、その後の訴訟手続の全部を違法ならしめる重大な瑕疵といえる。したがって、控訴を不適法とした原審の判断には、前提となる訴訟手続に法令違反がある。
結論
管轄違いの裁判所による移送懈怠と書類の廻送は違法であり、これに基づく控訴却下の原判決は破棄を免れない。本件を高松高等裁判所に移送する。
実務上の射程
管轄違いの不備がある訴えや控訴の提起であっても、裁判所には適切な移送措置を講じる義務があることを示す。答案上は、訴訟要件の具備や期間遵守の判断において、裁判所の誤導や手続上の不備が当事者の不利益に帰する場合の違法性を論じる際の根拠となる。現在は民事訴訟規則等により適法な裁判所への回付運用もなされるが、移送義務の基本原則を確認する上で重要である。
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