農地法六一条の規定により国から農地の売渡を受けた者であつても、指定開墾完了時より三年を経過した後には、都道府県知事または農林大臣の許可を得たうえ、当該農地を農地以外のものに転用するためその所有権を他に移転することができるから、右期間経過前に、将来所有権の移転が可能となつたときに完結する約定のもとに、当該農地につき売買の予約をした場合、その買受人が農地取得資格を有せず、これを農地以外のものにする目的で買い受け、しかも、その真意が当該農地が宅地に変更された場合の値上りによる利得にあつたとしても、これらの事実をもつて直ちに右予約が農地法の法意に反し無効であるとはいえない。
農地の売買の予約が農地法の法意に反し無効とした判断が違法であるとされた事例
農地法3条,農地法5条
判旨
農地の売買予約において、農地法上の許可を停止条件とする旨の付款がなくても直ちに無効とはならず、将来の転用・移転が可能となった時点での完結を約したものであれば、投機目的であっても有効である。
問題の所在(論点)
農地法上の許可を停止条件としていない農地の売買予約の効力、および農地取得資格のない者が転用・投機目的で締結した予約の有効性。
規範
1. 農地の売買予約において、農地法上の許可を停止条件とする付款がないことのみをもって、当該予約が直ちに無効となるものではない。 2. 国から売渡を受けた農地について、指定開墾完了時から3年経過後に知事等の許可を得て転用・移転することが可能である以上、当該期間経過後に所有権移転が可能となったときに完結する約定で予約がなされた場合には、買受人が農地取得資格を欠き、転用目的・投機目的であっても、直ちに農地法の法意に反し無効とはいえない。
重要事実
被上告人(売主)は、国から売渡を受けた農地について、将来の宅地化による値上がりを見込んだ訴外Fら(買主)との間で代金45万円の売買予約を締結した。当時、当該土地は農地であり、法令上、所有権移転には農林大臣や県知事の許可を要する状態であったが、予約には許可を停止条件とする旨の付款はなかった。また、Fらは薬局経営者であり自ら耕作する意図はなく、投機目的で予約を締結したものであった。原審は、これらの点から本件予約を農地法の法意に反し無効としたが、上告人がこれを不服として争った。
事件番号: 昭和38(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
債務額一三七万円の約四・五倍にあたる六〇九万五千円余の価額を有する土地および建物を目的とする代物弁済契約であつても、相手方の窮迫、軽卒に乗じ不当な利益を獲得する目的でしたものと認められない以上、右代物弁済契約は、民法第九〇条により無効であるとはいえない。
あてはめ
本件土地は指定開墾完了時から3年を経過すれば、知事等の許可を得て宅地への転用や所有権移転が可能となる性質のものである。本件予約は、将来においてこれら所有権移転が可能となったときに完結する趣旨でなされたものと解される。したがって、現時点で許可を停止条件とする文言がなくても、将来の適法な移転を前提とする限り、農地法が禁止する脱法行為には当たらない。また、買受人の主観的意図が転用後の転売による利得(投機)にあったとしても、客観的に適法な手続きを経て行われる予約である以上、その有効性を否定すべき理由にはならない。
結論
本件売買予約は有効である。原審が、許可の条件付与がないことや投機目的であることを理由に直ちに無効とした判断には、法令の解釈適用の誤りがある。
実務上の射程
農地法の規制(3条、5条等)を潜脱する脱法的な移転は無効だが、将来の「許可取得」を前提とする予約は広く有効性を認めるのが判例の立場である。司法試験においては、物権変動の時期や農地法上の制限が問題となる事案で、予約段階での有効性を肯定する際の根拠として用いることができる。
事件番号: 昭和43(オ)893 / 裁判年月日: 昭和45年11月26日 / 結論: 破棄差戻
省略(判文参照)
事件番号: 平成13(受)94 / 裁判年月日: 平成13年10月26日 / 結論: 破棄自判
農地を農地以外のものにするために買い受けた者は,農地法5条所定の許可を得るための手続が執られなかったとしても,特段の事情のない限り,代金を支払い農地の引渡しを受けた時に,所有の意思をもって農地の占有を始めたものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和35(オ)488 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買における知事の許可は、売買による所有権移転の効力発生要件に過ぎず、売買契約そのものの成立要件ではない。したがって、農地売買契約の成立日は、知事の許可の日ではなく、現実に売買の合意がなされた日となる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で農地の売買契約が締結され、その後、当該売買に基…
事件番号: 昭和36(オ)15 / 裁判年月日: 昭和38年10月10日 / 結論: その他
売買一方の予約に基づいて売買本契約が成立した場合は、売買予約締結当時を基準として詐害行為の要件の具備の有無を判断すべきである。