省略(判文参照)
売買予約の成立を否定した判断に経験則違反の違法があるとされた事例
民訴法394条
判旨
公正証書の記載内容と矛盾する事実を認定するには、特段の事情がない限り、経験則に照らして合理的な理由が必要である。金銭消費貸借の主張についても、利息や弁済期の定め等の不自然さを検討せずに売買の予約を否定することは、経験則に反し許されない。
問題の所在(論点)
公正証書に売買契約の旨が記載されている場合に、これを否定して金銭消費貸借契約の成立を認める原審の事実認定が、経験則に反し違法となるか。
規範
当事者間で作成された公正証書等の処分証書に記載された合意内容を否定し、別異の法律関係(例えば金銭消費貸借契約等)を認めるためには、証書の記載および体裁から推認される事実を覆すに足りる「特段の事情」が認められなければならない。この認定にあたっては、金銭授受の金額の合理性、当事者の属性、利息・弁済期の定めの有無等の客観的事実に照らし、経験則に反しない合理的な理由を示す必要がある。
重要事実
被上告人と上告人ら(金融業者Dの子)の間で、土地の売買契約を内容とする公正証書が作成され、被上告人は代金全額の領収書を交付した。一方、土地は農地で移転登記が困難だったため、抵当権設定登記もなされた。被上告人は、実際にはDからの借入れ(金銭消費貸借)であり、公正証書は担保目的の形式的なものに過ぎないと主張。原審は、被上告人が少しずつ元利金を返済していたこと等を根拠に、売買の予約を否定し、金銭消費貸借であると認定した。
事件番号: 昭和43(オ)732 / 裁判年月日: 昭和45年11月19日 / 結論: 破棄差戻
甲が、乙からその所有不動産を買い受けたものであるにもかかわらず、乙に対する貸金を被担保債権とする抵当権と、右貸金を弁済期に弁済しないことを停止条件とする代物弁済契約上の権利とを有するものとして、抵当権設定登記および所有権移転請求権保全の仮登記を経由した場合において、丙が乙から右不動産を買い受けて所有権取得登記を経由した…
あてはめ
まず、授受された金額が「21万6300円」という端数のある額であり、30万円の借入申込に対する貸付額としては不自然で、むしろ売買代金とみるのが自然である。次に、金融業者Dが未成年の子を買い主や抵当権者とする複雑な方法を採る必要性は、売買の意図がない限り説明が困難である。さらに、消費貸借であれば当然あるべき利息や弁済期の定めについて原審の認定は不十分であり、被上告人が主張する返済も、別件の貸借に関する領収証とみるのが合理的である。加えて、抵当権設定も所有権移転不能時の代金返還担保と解釈可能である。これらを総合すると、十分な理由なく売買の予約を否定した原審の判断は不合理である。
結論
原審が売買の予約の成立を否定した判断には、経験則に反する違法がある。したがって、原判決を破棄し、さらに審理を尽くさせるため本件を差し戻す。
実務上の射程
処分証書の証拠力に関する事実認定の枠組みとして重要。答案上、契約書の存在にもかかわらず「通謀虚偽表示」や「公序良俗違反(暴利行為)」、「担保目的」等を主張する場合に、公正証書等の強い証拠力を覆すための具体的考慮要素(金額の端数、当事者の関係、利息等の約定欠如)を摘示する際の指針となる。
事件番号: 昭和46(オ)803 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 破棄差戻
甲が、乙と相通じ、仮装の所有権移転請求権保全の仮登記手続をする意思で、乙の提示した所有権移転登記手続に必要な書類に、これを仮登記手続に必要な書類と誤解して署名押印したところ、乙がほしいままに右書類を用いて所有権移転登記手続をしたときは、甲は、乙の所有権取得の無効をもつて善意・無過失の第三者に対抗することができない。
事件番号: 昭和35(オ)153 / 裁判年月日: 昭和36年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟上の和解において確定された条項の解釈は、和解に至る経過や関連する登記等の事実関係、条項の文言に照らして判断されるべきであり、確定した和解内容が従前の法律関係と異なる場合であっても、和解の効力(民法696条)によりその内容が拘束力を持つ。 第1 事案の概要:訴外Dと訴外E殖産株式会社との間で、本…
事件番号: 昭和43(オ)938 / 裁判年月日: 昭和45年11月26日 / 結論: 破棄差戻
農地法六一条の規定により国から農地の売渡を受けた者であつても、指定開墾完了時より三年を経過した後には、都道府県知事または農林大臣の許可を得たうえ、当該農地を農地以外のものに転用するためその所有権を他に移転することができるから、右期間経過前に、将来所有権の移転が可能となつたときに完結する約定のもとに、当該農地につき売買の…
事件番号: 昭和43(オ)916 / 裁判年月日: 昭和44年7月4日 / 結論: 棄却
一、労働金庫の会員外の者に対する貸付は無効である。 二、労働金庫の員外貸付が無効とされる場合においても、右貸付が判示のような事情のもとにされたものであつて、右債務を担保するために設定された抵当権が実行され、第三者がその抵当物件を競落したときは、債務者は、信義則上、右競落人に対し、競落による所有権の取得を否定することは許…