一、「松魚つぶ」の文字を縦書し、「松魚」の文字の右側に「カツヲ」の文字を振仮名して成る商標(指定商品、旧四三類飴菓子)および「土佐自慢」の文字の下方にこれよりやや大きく「初鰹」の文字をいずれも通常の書体で縦書して成る商標(指定商品、旧四三類菓子及び麺麭の類)がある場合において、右両商標から共通して抽出される「かつを」の観念に相当する「かつを」、「カツヲ」、「カツオ」あるいは「鰹」の語にも、特別顕著性がないとはいえない。 二、登録商標において権利不要求部分がある場合においても、商標の類否の判定は、当該権利不要求部分をも含めて全体としてなされるべきである。
一、飴菓子等を指定商品とする商標につき「かつを」等の語に特別顕著性が認められるとした事例 二、権利不要求部分がある場合と商標の類否の判定
旧商標法(大正10年法律第99号)1条2項,旧商標法(大正10年法律第99号)8条1項,旧商標法(大正10年法律第99号)8条2項
判旨
商標の類否は、観念、外観、称呼を総合的に判断すべきであるが、観念において類似する以上、商標全体として類似すると認めることを妨げない。また、指定商品との関係で普通名称に該当しない限り、魚の名称のような一般的な語であっても自他商品識別力を有し得る。
問題の所在(論点)
商標の一部に識別力が低い語や権利不要求部分が含まれる場合において、観念の類似のみをもって商標全体の類似を肯定できるか。また、魚の普通名称が飴菓子の商標として特別顕著性を有するか。
規範
商標の類否判断は、外観、称呼、観念の各要素を総合的に考察すべきであるが、そのうち一要素において類似し、そのために商品混同の虞がある場合には、商標全体として類似すると解するのが相当である。また、権利不要求部分(ディスクレーマー)が存在する場合であっても、類否の判定は当該部分を含めた全体としてなされるべきである。指定商品の普通名称でない限り、一般的な語であっても特別顕著性(識別力)を否定することはできない。
事件番号: 昭和41(行ツ)36 / 裁判年月日: 昭和43年12月13日 / 結論: 棄却
いずれも薬剤等を指定商品とした「リユーマゾロン」なる商標と「ロイマゾン」なる商標とは観念において類似するものと認むべきである。
重要事実
上告人は「土佐自慢初鰹」から成る登録商標(本件商標、指定商品:飴菓子)を有していた。これに対し、引用商標は「松魚(カツヲ)つぶ」であった。「つぶ」は高知地方で飴菓子を指す一般的な言葉であったため、引用商標の要部は「松魚(カツヲ)」であり、そこから「かつを」の観念が生じると認定された。一方、本件商標からも「初鰹」の文字から「かつを」の観念が生じるため、両者の類否が争われた。
あてはめ
引用商標中の「つぶ」は、地方において飴菓子を指す名称として広く使用されており、取引者の注意を引く要部は「松魚(カツヲ)」である。本件商標と引用商標は、いずれも「かつを」という共通の観念を生じさせる。両者は季節性の違い等により区別し得るとの主張もあるが、同一種類の観念に属する以上、混同の虞を否定できない。また、「かつを」は魚の普通名称ではあるが、指定商品である「飴菓子」の普通名称ではないため、自他商品識別力を有する。権利不要求部分である「土佐自慢」を含めて全体として観察しても、この結論は左右されない。
結論
本件商標は引用商標と類似する。したがって、本件商標の登録を無効とした判断は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
商標の類否判断において、外観・称呼が異なっても「観念」の共通性によって類似性が肯定され得ることを示した事例。特に、一部が記述的・一般的名称である場合の要部認定や、権利不要求部分があっても「全体観察」の原則が維持される点において実務上重要である。
事件番号: 昭和39(行ツ)110 / 裁判年月日: 昭和43年2月27日 / 結論: 棄却
糸一般を指定商品とし「しようざん」の称呼をもつ商標と硝子繊維糸のみを指定商品とし「ひようざん」の称呼をもつ商標とでは、右両商標が外観および観念において著しく異なり、かつ、硝子繊維糸の取引では、商標の称呼のみによつて商標を識別しひいて商品の出所を知り品質を認識するようなことがほとんど行なわれないのが実情であるときは、両者…
事件番号: 昭和39(行ツ)54 / 裁判年月日: 昭和43年11月15日 / 結論: 破棄自判
登録出願にかかる商標の指定商品が、旧商標法施行規則(大正一〇年農商務省令第三六号)所定の類別のうち、引用商標の指定商品をとくに除外したものであり、また、前者の指定商品が後者の指定商品とは品質・形状・用途等を異にする商品を含むものであるとしても、両者の指定商品は、必ずしもつねにその製造元・発売元を異にするものとはいえず、…
事件番号: 昭和34(オ)448 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類似性判定において、過去に同一または類似の商標が併存していた事実があったとしても、現在の時点における類似性の認定を妨げるものではない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願商標が引用商標と類似しないと主張して上告した。上告人は、出願商標の図形からは「トナカイ」または「鹿」の観念が生じるため…