賃借人が賃借家屋の無断改造工事をした場合でも、それが容易に復元できる簡易なものであり、もしくは浸水を防止するため必要であつた等、原判示の事情(原判決理由参照)がある場合には賃貸借の目的物保管義務に違反しないものと解すべきである。
賃貸家屋の無断改造工事が賃貸借の目的物保管義務に違反しないとされた事例。
民法400条,民法594条
判旨
賃借人による目的物の改造が、社会通念上許容される範囲内の補修改装に留まる場合には、賃借人の目的物保管義務(善管注意義務)に違反しない。
問題の所在(論点)
賃借人が無断で目的物の改造工事を行った場合において、いかなる限度で目的物保管義務(善管注意義務)違反が認められるか。
規範
賃借人は、賃貸借契約に基づき目的物を良好な状態で保存すべき保管義務(民法400条)を負うが、実施された改造工事の内容が、その程度や目的に照らして社会通念上許容される補修改装の範囲内といえる場合には、当該義務に違反したとは認められない。
重要事実
賃借人(被上告人)が、賃借した本件家屋において改造工事を実施した。賃貸人側(上告人ら)は、この改造工事が賃借人もしくは転借人の目的物保管義務に違背するものであると主張し、賃貸借契約の解除事由等として争った。原審は、当該改造工事が社会通念上許容される範囲内のものであると認定していた。
あてはめ
本件における改造工事の内容を検討すると、それが建物の構造を根本的に破壊したり価値を著しく損なうものではなく、利用の必要性に応じた補修改装の範疇に含まれる。このような工事は、賃借人に課せられた善管注意義務を尽くした上での通常の使用・収益に伴う範囲内といえ、社会通念上も許容されるものである。したがって、目的物保管義務に違反したとはいえない。
結論
本件改造工事は、賃貸借の目的物保管義務に違反するものではなく、社会通念上許容された補修改装と認められるため、保管義務違反を理由とする請求は認められない。
実務上の射程
賃借人の無断改造が債務不履行(解除事由)を構成するか、あるいは明渡時の原状回復義務の範囲を検討する際の基準として活用できる。特に「社会通念上許容される補修改装」かどうかの判断では、工事の必要性、態様、原状回復の難易等を総合考慮する枠組みを示唆している。
事件番号: 昭和39(オ)1035 / 裁判年月日: 昭和40年11月16日 / 結論: 棄却
二階建家屋の賃借人が、無断で賃借家屋の階下の店舗部分の柱一本を切除して一畳半の床部分を落間とし、賃借家屋の廂の下からトタン葺の下屋をさげて約三畳の間を増築する等判示の増改築をした場合には、賃貸人は著しい不信行為のなされたことを理由として催告なしに賃貸借契約を解除することができる。