家屋賃借人が賃借家屋の一部を賃貸人の承諾を得て他に転貸した場合において、転借人がその後賃貸人から右家屋の譲渡を受けてその所有権を取得したときは、転借人において賃貸人の地位を承継し、爾後は自ら賃借人に対して右家屋全部の使用収益をなさしめる義務を負うことになるのであり、転借人において当該転借部分の使用収益をなしうるのは、賃借人との間の転貸借関係に基づくものであつて、転借人の右家屋所有権取得により転貸借が当然消減するものではない。
家屋の一部の転借人が賃貸人から右家屋の所有権を取得した場合における賃借人との法律関係。
民法612条,民法613条,借家法1条
判旨
賃借家屋の一部を承諾を得て転借している者が当該家屋の所有権を取得した場合、その者は賃貸人の地位を承継しつつ、転貸借関係も存続し、賃借人に対し家屋全部を使用収益させる義務を負う。
問題の所在(論点)
賃借家屋の一部を適法に転借している者が当該家屋の所有権を取得した場合、賃借人との間の転貸借関係は消滅するか。また、所有権を取得した転借人は、賃借人に対しどのような義務を負うか。
規範
家屋の一部を適法に転借している者が、賃貸人から当該家屋の譲渡を受けてその所有権を取得した場合、転借人は賃貸人の地位を承継し、賃借人に対して家屋全部を使用収益させる義務を負う。このとき、転借部分の使用収益権原は転貸借契約に基づくものであり、所有権取得により転貸借が混同等で当然に消滅することはない。
重要事実
賃借人(被上告人)は、家屋の一部を賃貸人の承諾を得て上告人に転貸していた。その後、転借人である上告人が賃貸人から家屋を譲り受けて所有権を取得した。上告人は所有権取得を理由に賃貸借関係の変動を主張し、転借料の支払を怠ったため、被上告人は転貸借契約を解除し、上告人に対し転借部分の明渡しと賃料相当損害金の支払を求めた。
事件番号: 昭和33(オ)890 / 裁判年月日: 昭和35年6月23日 / 結論: 棄却
賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰した場合であつても、転貸借は、当事者間にこれを消滅させる合意の成立しない限り、消滅しないものと解すべきである。
あてはめ
上告人は家屋の所有権取得により賃貸人の地位を承継したため、賃借人(被上告人)に対し、賃貸借契約に基づき家屋全部を使用収益させる義務を負う。転借部分を現に使用している根拠は、被上告人との転貸借契約に求められるべきであり、所有権取得という事実によって転貸借関係が当然に消滅するものではない。上告人が転借料を不払いとした事実に鑑みれば、転貸借契約の解除は有効である。
結論
転借人の所有権取得によっても転貸借関係は消滅せず、上告人は賃貸人の地位を承継する。転借料不払いによる解除に基づき、被上告人は上告人に対し、転借部分の明渡しおよび賃料相当損害金の支払を請求できる。
実務上の射程
所有権と制限物権(または債権的利用権)が同一人に帰属した際の混同の例外を、転貸借関係においても認めたものといえる。答案上は、転借人が家屋を買い受けた場合でも、中間者である賃借人の地位を保護する必要がある場面で、賃貸人・賃借人・転借人の三面関係を維持する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1487 / 裁判年月日: 昭和39年9月22日 / 結論: 棄却
原判決の認定した相当賃料が地代家賃統制令を超過する事実は、原審で主張立証がなく従つて認定を経ていない以上、上告審ではじめて主張することはできない。