判旨
適式な呼出しを受けながら出頭しない証人の証拠採用を取り消し、当該証人を再度取り調べることなく弁論を終結させる措置は、既に別期日において同様の事項につき尋問・反対尋問が行われている場合には、違法とはいえない。
問題の所在(論点)
適式な呼出しに応じない証人の採用を取り消し、取調べを行わずに結審した裁判所の措置が、当事者の証拠調べを求める権利を侵害する違法なもの(審理不尽等)となるか。
規範
裁判所が一度採用を決定した証人であっても、適式な呼出しを受けたにもかかわらず出頭しない場合には、その採用を取り消すことができる。また、当該証人の尋問事項について、既に別の機会(第一審等)において相手方の反対尋問を経た取調べがなされているのであれば、重ねて取り調べることなく結審したとしても、審理不尽や手続的権利の侵害として違法とはならない。
重要事実
上告人は原審において証人Dを申請したが、Dは原審の第4回から第7回までの期日に適式な呼出しを受けながら、いずれも出頭しなかった。そのため、原審は証人Dの採用を取り消し、取調べを行うことなく弁論を終結させた。なお、Dは既に第一審において、被上告人の申請に基づき、本件申請と同趣旨の事項について取り調べられており、上告人による反対尋問も行われていた。
あてはめ
本件証人Dは、複数回にわたり適式な呼出しを受けながら出頭を拒んでおり、証拠調べの実施が困難な状況にあった。また、上告人が申請した尋問事項は、第一審において被上告人が申請した事項と同趣旨のものであり、既に第一審で上告人の反対尋問を経た取調べが完了している。そうであれば、原審において改めて同一の証人を尋問する必要性は乏しく、採用取消し及び結審の措置は合理的な訴訟指揮の範囲内といえる。
結論
原審の措置に違法はなく、憲法違反等の上告理由は認められない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟遅延を回避するための裁判所の裁量的な証拠採用取消しの適法性を肯定した事例。反対尋問の機会が既に確保されているかどうかが、手続的正義の観点から重要な考慮要素となる。実務上は、証人の不出頭が続く場合に、既存の証言の信用性や補充の必要性を検討する際の基準となり得る。
事件番号: 昭和31(オ)559 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
裁判所が受託裁判官による証人尋問の結果につき当事者に援用の機会を与えたに拘らず、当事者双方においてこれをしないときは、右援用のないまま口頭弁論を終結しても違法ではない。