相手方申出の証人につき相手方から尋問放棄の申出があつた以上、これを取調べることなく弁論を終結しても審理不尽をいう余地はない。
相手方申出の証人を取り調べないことと審理不尽の論旨。
民訴法259条,民訴法394条
判旨
相手方の申し出た証人について、相手方が尋問放棄の申し出をした場合、裁判所が当該証人の取調べを行わずに弁論を終結させることは審理不尽の違法にあたらない。
問題の所在(論点)
当事者が申し出た証人について、その当事者自身が尋問放棄の申し立てをした場合に、裁判所が当該証人の取調べを行わずに弁論を終結させることが審理不尽の違法(民事訴訟法上の違法)に該当するか。
規範
民事訴訟において、証拠調べを行うか否かは原則として裁判所の裁量に属するが、当事者が申し出た証拠を調べないことが著しく不当である場合には審理不尽の違法となり得る。もっとも、証拠の申し出をした当事者自身が後にその尋問を放棄する旨の意思表示をした場合には、特段の事情がない限り、裁判所が当該証人を取り調べないまま審理を終結させることに手続上の違法は認められない。
重要事実
上告人は、原審が証人Dの取調べを行うことなく弁論を終結した点について、審理不尽の違法があると主張して上告した。しかし、記録上、当該証人Dは相手方が申し出たものであり、かつ、原審の第16回口頭弁論期日において、その申し出た当事者(相手方)自身によって尋問放棄の申し立てがなされていた。
あてはめ
本件において、問題となっている証人Dは、上告人ではなく相手方が申し出た証拠である。さらに、原審の記録によれば、相手方は自ら第16回弁論期日において尋問放棄の意思表示を明確に行っている。当事者が自ら証拠調べの必要がないと判断して放棄した以上、裁判所がこれに従い取調べを行わなかったとしても、当事者の立証の機会を不当に奪ったとはいえず、審理を尽くさなかったものとは評価できない。したがって、原審の手続に審理不尽の違法は認められない。
結論
相手方の申し出にかかる証人について、相手方が尋問放棄をした以上、原審がその取調べを行わず弁論を終結したことに審理不尽の違法はない。
実務上の射程
当事者の証拠申出に対する処分権を認める実務を追認するものである。答案上は、審理不尽や釈明権の限界が問題となる場面で、当事者による証拠の撤回・放棄がある場合の裁判所の義務を否定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)913 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】適式な呼出しを受けながら出頭しない証人の証拠採用を取り消し、当該証人を再度取り調べることなく弁論を終結させる措置は、既に別期日において同様の事項につき尋問・反対尋問が行われている場合には、違法とはいえない。 第1 事案の概要:上告人は原審において証人Dを申請したが、Dは原審の第4回から第7回までの…