裁判所が受託裁判官による証人尋問の結果につき当事者に援用の機会を与えたに拘らず、当事者双方においてこれをしないときは、右援用のないまま口頭弁論を終結しても違法ではない。
受託裁判官による証人尋問の結果につき当事者の援用がないまま口頭弁論を終結することの適否。
民訴法265条1項
判旨
受託裁判官による証人尋問の結果につき、裁判所が当事者に演述・援用の機会を与えたにもかかわらず当事者がこれをしない場合、当該援用がないまま口頭弁論を終結しても違法ではない。
問題の所在(論点)
受託裁判官による証人尋問が行われたにもかかわらず、口頭弁論期日において当事者がその結果を援用しないまま結審した場合、受訴裁判所の手続に違法があるか。口頭主義・弁論主義に基づく証拠資料の取り込み手続の適否が問題となる。
規範
受託裁判官による証人尋問の結果(証人尋問調書)を裁判の基礎とするためには、口頭弁論の期日において当事者がその結果を演述または援用し、弁論の全趣旨に取り込む必要がある。しかし、裁判所が適法に呼出しを行い、当該証拠を提示して演述・援用の機会を十分に与えたのであれば、当事者がこれを行わずに弁論を終結させたとしても、手続上の違法は存しない。
重要事実
受託裁判所において双方代理人立ち会いのもと証人尋問が行われ、その尋問調書が受訴裁判所に送付された。受訴裁判所は口頭弁論期日を指定し、双方代理人に適法な呼出状を送達したが、二度にわたり控訴人(上告人)側の本人および代理人が出頭しなかった。被控訴人(被上告人)本人は出頭したが、裁判長が法廷で尋問調書を提示した際、被控訴人本人は尋問結果を援用せず、他に主張立証はないと陳述したため、裁判所は口頭弁論を終結した。
あてはめ
本件では、受訴裁判所は双方代理人に対し合式の呼出状を順次送達しており、当事者が尋問結果について陳述する機会を制度的に保障している。それにもかかわらず、上告人側は正当な理由なく期日に出頭せず、出頭した被上告人側も調書の提示を受けながら援用を行わない旨を明示している。このような状況下では、裁判所は当事者に演述援用の機会を十分に与えたといえる。当事者が自らその機会を放棄した以上、援用がないまま審理を終えても、手続的な瑕疵があるとは解されない。
結論
裁判所が当事者に演述援用の機会を与えたにもかかわらず当事者がこれをしない場合は、右援用のないまま口頭弁論を終結しても何ら違法ではない。
実務上の射程
口頭主義の原則により、受託判事等の証拠調べ結果は口頭弁論で顕出される必要があるが、本判決は、裁判所が機会を提供したにもかかわらず当事者が懈怠した場合には、そのまま結審しても手続保障に反しないことを示している。実務上は、不出頭による証拠援用の欠如が直ちに手続違憲や違法とならない限界事例として機能する。
事件番号: 昭和35(オ)1127 / 裁判年月日: 昭和37年10月9日 / 結論: 棄却
相手方申出の証人につき相手方から尋問放棄の申出があつた以上、これを取調べることなく弁論を終結しても審理不尽をいう余地はない。