第一審において、当事者の一方を代理する権限のない弁護士がその訴訟代理人として訴訟手続を遂行した場合に、第二審において、右当事者を代理する権限のある弁護士が、第一審訴訟手続の右かしを主張することなく訴訟手続を遂行して判決を受けたときは、これにより右訴訟代理権の欠缺のある訴訟行為を追認したものと認めるのが相当である。
訴訟代理権に欠缺のある訴訟行為の追認の推定。
民訴法54条
判旨
第一審における訴訟代理権の欠缺という訴訟手続上の瑕疵は、控訴審において権限ある訴訟代理人が当該瑕疵を主張せずに訴訟手続を続行した場合には、特段の事情がない限り、欠缺ある訴訟行為を追認したものと解される。
問題の所在(論点)
1. 第一審において訴訟代理権の欠缺があったとしても、控訴審で適法な代理人が瑕疵を指摘せず訴訟を続行した場合、当該瑕疵は治癒されるか(追認の成否)。 2. 裁判所が証人尋問を行わないことは審理不尽にあたるか。
規範
訴訟代理権の欠缺がある場合であっても、本人が後の審級において選任した適法な訴訟代理人が、前審における手続上の瑕疵を主張することなく、そのまま訴訟を続行して判決を受けた場合には、前審における無権代理人による訴訟行為を黙示的に追認したものとみなすべきである(民事訴訟法34条2項参照)。また、証拠調べの要否については裁判所の自由裁量に属する。
重要事実
上告人は、第一審において弁護士を選任した事実がないにもかかわらず、当該弁護士が訴訟代理人として活動したとして、訴訟代理権の欠缺を主張した。しかし、第二審において上告人が適法に選任した訴訟代理人は、第一審の手続的な瑕疵を主張することなく訴訟を続行し、判決を受けていた。さらに、上告人は特定の証人尋問が行われなかったことも不服として上告した。
あてはめ
上告人は、第一審の代理人選任に瑕疵があると主張するが、第二審で選任された権限ある訴訟代理人は、この瑕疵を争うことなく手続を進行させている。この事実は、第一審における無権代理行為を追認したと評価するのが相当である。また、証人尋問の実施は裁判所の裁量事項であるため、一部の証人を取り調べなかったとしても、直ちに審理不尽の違法があるとはいえない。
結論
1. 第二審における適法な代理人の訴訟続行により、第一審の訴訟代理権の欠缺は追認されたものと認められる。 2. 証拠調べの裁量権の範囲内であり、審理不尽の違法はない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
代理権の欠缺という重大な手続違背であっても、後の審級で適法な代理人が異議なく訴訟を遂行した場合には追認が認められるという、訴訟経済および禁反言の観点からの判断枠組みを示している。答案上は、訴訟手続の瑕疵の治癒(民訴法34条2項の類推適用等)を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)567 / 裁判年月日: 昭和40年11月18日 / 結論: 棄却
上告人申出の証人を採用しなかつたことは、唯一証拠排斥の場合ではなく、且つ、原審が証拠調の必要限度を合理的に裁量した結果と認められる。