融資契約で定められた貸付限度をこえる金額の貸付が行われ、のち一部弁済があつた場合は、該弁済が融資契約による限度内の元金に充当されたのか、それをこえる元金に充当されたのかを確定しないかぎり、融資契約についての保証人の責任の範囲を判定しえないと解すべきである。
融資契約に定められた限度をこえて貸付が行われたのち一部弁済があつた場合と保証人の責任。
民法448条,民法490条
判旨
貸付極度額が定められた融資契約において、債権者が極度額を超える貸付けを行った場合、その後の弁済がいずれの債務に充当されたかを確定しなければ、保証人の責任範囲を決定することはできない。
問題の所在(論点)
融資契約の極度額を超える貸付けと一部弁済がなされた場合において、保証人の責任範囲を確定するために必要な審理事項は何か。
規範
特定の融資契約に基づく債務を保証した保証人の責任範囲は、当該契約の範囲内の債務に限られる。債権者が主債務者に対し、保証の対象となる契約に基づく貸付けと、その範囲外の貸付けを併せて行い、その後に一部弁済がなされた場合、保証人の責任を確定するためには、弁済充当の理(民法488条以下)に基づき、いずれの債務に対して弁済がなされたかを審理・確定しなければならない。
重要事実
債権者(銀行)、主債務者D、連帯保証人(上告人)の間で、貸付極度額を20万円とする融資契約が成立した。その後、銀行はDに対し44万円を貸し付けたが、Dは後に15万5000円を弁済した。原審は、Dの債務残高が28万5000円であり、極度額の20万円を超えていることを理由に、上告人は直ちに20万円全額の支払義務を負うと判断した。
あてはめ
本件44万円の貸付けのうち、融資契約に基づくのは20万円であり、残りの24万円は契約外の貸借である。上告人が連帯保証義務を負うのは前者の20万円分に限られる。Dがなした15万5000円の弁済が、契約内の20万円の債務に充当されたのであれば保証債務は消滅の範囲で減縮し、契約外の24万円に充当されたのであれば保証債務は影響を受けない。原審は、この充当関係を審理することなく、残債務が極度額以上であることのみをもって上告人の責任を認めており、審理不尽・理由不備の違法がある。
結論
弁済が融資契約に基づく債務とそれ以外の債務のいずれに充当されたかを審理確定すべきであるとして、原判決を破棄し差戻した。
実務上の射程
保証人の責任を限定する合意(極度額)がある事案において、主債務者が複数の債務を負っている場合の弁済充当の重要性を示す。答案上は、保証人の附従性や責任範囲を論じる際、極度額超過の貸付けがある場合には、単純な残高比較ではなく「どの債務が消滅したか」という充当の視点が必須であることを指摘するために用いる。
事件番号: 昭和37(オ)1032 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: 棄却
手形の裏書交付があつたからといつて、原因関係たる貸金債務の保証若しくは連帯保証契約を締結する意思を表示したものと解することはできない。