「一定の日に賃貸借更新拒絶の通知がなされた」旨の相手方の主張を認める旨陳述した後、「別の日に更新拒絶の通知をした」旨陳述しても、後者の陳述が前者の陳述と相俟つて二度にわたり、それぞれ別個の通知をしたという事実関係を表明する趣旨であるときは、前者の陳述が裁判上の自白にあたるとしても、後者の陳述は自白の撤回にはならない。
自白の撤回にあたらないとされた事例。
民訴法257条
判旨
裁判上の自白が成立した後に、それと矛盾しない別の事実を追加的に主張したとしても、先行する自白を撤回したものとはみなされない。
問題の所在(論点)
先行する主張を認めた自白がある場合に、それと異なる日付の同一態様の事実を主張することが自白の撤回に当たるか。
規範
裁判上の自白(民事訴訟法179条参照)が成立した場合、当事者はこれを自由に撤回することはできない。もっとも、後になされた陳述が、先行する自白に係る事実を否定し訂正する趣旨ではなく、それとは別個の事実を重畳的に追加する趣旨であると解される場合には、自白の撤回には当たらない。
重要事実
賃借人(上告人)が賃貸人(被上告人)に対し賃借権確認等を求めた訴訟において、賃借人は「賃貸人が昭和31年7月7日に更新拒絶の通知をした」と主張し、賃貸人は当初これを認める旨陳述した(前陳述)。その後、賃貸人は「昭和30年12月1日にも更新拒絶の通知をした」との陳述(後陳述)を行った。賃借人は、この後陳述がなされたことにより前陳述による自白が撤回された旨を主張して上告した。
あてはめ
本件における後陳述は、唯一回しかなされなかった更新拒絶の通知の日付を訂正する趣旨ではない。むしろ、前陳述と相まって、昭和30年12月1日と昭和31年7月7日の二度にわたり、それぞれ別個の通知がなされたという事実関係を併せて表明するものと解するのが相当である。したがって、仮に前陳述が裁判上の自白に当たるとしても、後陳述によって当該自白を撤回したものとみることはできない。
結論
後陳述は自白の撤回には当たらず、先行する自白の効力は維持される。上告棄却。
実務上の射程
自白の対象となった事実と両立可能な別個の事実を主張する「補充的陳述」については、自白の撤回(要件:相手方の同意または反真実かつ錯誤)の法理は適用されないことを示した。実務上は、後続の陳述が先行自白の「訂正・否定」か、単なる「事実の追加」かを解釈する際の指針となる。
事件番号: 昭和32(オ)111 / 裁判年月日: 昭和34年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所に対する自白(裁判上の自白)が成立した場合、その撤回は原則として許されず、撤回を認めるべき特段の事情がない限り、裁判所は自白された事実を基礎として裁判しなければならない。 第1 事案の概要:被上告人が、昭和29年1月に上告人(家屋所有者および敷地所有者の代理人)との間で家屋および敷地を代金3…