民訴法第三一二条にいわゆる文書の所持者とは、文書の直接占有者を意味し、間接占有者を含まない。
「文書の所持者」の意義。
民訴法312条
判旨
民事訴訟法における文書提出命令の対象となる「文書の所持者」とは、文書を直接に事実上支配している者を意味し、間接占有者や取得し得る地位にある者は含まれない。
問題の所在(論点)
民事訴訟法(旧法312条、現法220条等参照)にいう「文書の所持者」に、間接占有者や文書を取得し得る地位にある者が含まれるか。
規範
民事訴訟法における「文書の所持者」とは、対象となる文書を直接に事実上支配している者を指す。したがって、文書の間接占有者たる地位にある者や、当該文書を取得し得る地位にあるというだけでは、文書提出義務を負う「所持者」には該当しない。
重要事実
上告人が、被上告人に対して文書提出命令を申し立てた事案。被上告人は、対象文書を直接占有しておらず、間接占有者の地位にあるか、あるいは取得し得る地位にあるにとどまっていた。原審はこれを踏まえ文書提出義務を否定したが、上告人は「所持者」の意義について解釈を誤っているとして上告した。
あてはめ
文書提出命令は、現に文書を支配し提出が可能な者に対してその義務を課すものである。本件において、被上告人は対象文書を直接に事実上支配しているとは認められず、単に間接占有の地位にあるか、あるいは取得可能な状態にあるに過ぎない。このような状態は、文書を直接に事実上支配しているという要件を満たさないため、「所持者」にあたるとはいえない。
結論
文書の間接占有者や取得し得る地位にある者は、民訴法上の「文書の所持者」にあたらず、文書提出義務を負わない。
実務上の射程
文書提出命令の相手方の適格に関する基本判例である。所持の判定は「直接の事実上の支配」という物理的・外形的な支配権を基準とするため、親会社に対し子会社が持つ文書の提出を求める場合や、実質的な支配下にあっても直接占有していない場合には、本判決の射程により「所持」が否定されるリスクを考慮する必要がある。
事件番号: 昭和35(オ)213 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
原審が民訴第七一条の当事者参加を許さずとする裁判の確定を待たずに本来の対立当事者間の訴訟につき本案判決をなしたことを違法とする主張は、右本案判決における当事者の上告適法の理由とならない。