市営住宅の入居者の近親者が入居者の留守番としてこれを占有しているとの主張が斥けられた事例。
判旨
建物の占有者が単なる賃借人の「留守番」にすぎないとは認められない場合、賃借人に対する賃貸借契約解除の有無を問わず、その占有者に対する明渡請求は正当化され得る。
問題の所在(論点)
建物の占有者が「留守番」であると主張する場合において、賃借人に対する契約解除の成否が、占有者に対する明渡請求の前提条件となるか。
規範
建物の占有者が賃借人の補助者(留守番等)に該当するか否かは、諸般の事実を総合して実質的に判断される。補助者と認められない独自の占有権原を主張し得ない占有者に対しては、賃借人との契約関係の解消を待たずして、所有権に基づく返還請求が可能である。
重要事実
上告人は、建物を占有していたが、自らを訴外D(賃借人)のための「留守番」であると主張した。しかし、原審(事実審)において、上告人が単なる留守番であるとは認められないとの事実認定がなされた。その上で、賃貸人側からの賃貸借契約解除の適法性が争点となった事案である。
あてはめ
原判決が挙げた諸事実を総合すると、上告人は訴外Dの単なる履行補助者や留守番としての地位にあるとは認められない。このように独自の占有を継続している実態がある以上、本件賃貸借契約が訴外Dとの間で解除されているか否かは、上告人に対する明渡請求の可否を左右する争点とはならないと解される。
結論
上告人が留守番であるとは認められない以上、賃借人に対する契約解除の有無にかかわらず、上告人に対する請求を認めた原判決に違法はない。
実務上の射程
占有者が賃借人の補助者にすぎないのか、あるいは独立した占有者(不法占有者を含む)なのかという認定が、契約解除の要否という法的構成に影響を与えることを示唆している。答案上は、占有者の法的地位の確定が先決問題となる場面で活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)383 / 裁判年月日: 昭和39年3月24日 / 結論: 棄却
民訴法第三一二条にいわゆる文書の所持者とは、文書の直接占有者を意味し、間接占有者を含まない。