建物賃貸借が賃借人の債務不履行によつて解除された場合には、借家法第四条を適用する余地がない。
建物賃貸借が賃借人の債務不履行によつて解除された場合と借家法第四条。
借家法4条
判旨
賃借人の債務不履行を理由に建物賃貸借契約が解除された場合、転借人は賃貸人に対し転借権を対抗できず、転貸借関係も当然に終了する。
問題の所在(論点)
賃借人の債務不履行により建物賃貸借契約が解除された場合、賃貸人は転借人に対してその解除の効果を対抗できるか(転貸借関係も終了するか)。
規範
建物賃貸借契約が賃借人の債務不履行(賃料不払等)により解除された場合、賃貸人は転借人に対してその解除をもって対抗することができる。この場合、転借人の保護を目的とする旧借家法4条(現行借地借家法34条等の趣旨)を適用または類推適用する余地はなく、基本となる賃貸借の終了に伴い、転貸借も当然に終了する。
重要事実
賃貸人(被上告人)と賃借人(訴外D)との間で建物賃貸借契約が締結された際、「賃料不払の場合には契約は当然解除となり、賃借人は自己の責任で転借人を退去させ明渡す」旨の約款が定められた。その後、賃借人が約款に反して賃料を不払いとしたまま行方不明となったため、賃貸人は債務不履行に基づき賃貸借契約を解除した。これに対し、転借人(上告人)は、旧借家法4条の適用や合意解除・放棄に準ずる構成を主張し、賃貸人に対して転借権の主張を継続した。
あてはめ
本件では、賃借人に顕著な賃料不払があり、特約(過怠約款)に基づき賃貸借契約が正当に解除されている。このような債務不履行による解除は、合意解除や権利の放棄とは異なり、賃借人の帰責事由に基づくものである。したがって、転借人の地位を保全すべきとする旧借家法4条の適用はなく、賃借人の義務違反によって基本契約が消滅した以上、その存在を前提とする転貸借も当然に消滅すると解される。上告人が主張する「借家権の放棄」等の事実は認められず、解除の効力は制限されない。
結論
賃借人の債務不履行による解除をもって転借人に対抗できる。したがって、転借人は賃貸人に対し、その地位を保有し得ない。
実務上の射程
賃貸借の終了原因が「債務不履行」である場合に射程が及ぶ。合意解除(民法613条3項参照)や期間満了(借地借家法34条)の場合とは異なり、賃借人の帰責性を重く見る判例である。答案上は、解除原因を特定した上で、転借人の地位が消滅することを論じる際に引用する。
事件番号: 昭和47(オ)968 / 裁判年月日: 昭和48年7月19日 / 結論: 破棄差戻
無断転貸を理由とする賃貸借契約解除の意思表示は、それ以外の理由によつては解除をしないことが明らかにされているなど特段の事情のないかぎり、同時に借家法一条の二の解約申入としての効力をも有する。