合資会社の社員が、第三者の債務につき、会社を代表して連帯保証契約を締結し、会社財産を担保にする行為は、たとえ右社員が右第三者の債務負担につき代理人として関与した場合であつても、商法第七五条にいう「取引」にあたらない。
商法第七五条の「取引」にあたらないとされた事例。
判旨
法人の目的の範囲内といえるかは、行為を客観的・抽象的に観察して判断すべきであり、特定の個人に対する連帯保証や代物弁済契約も、特段の事情がない限り目的の範囲内に含まれる。
問題の所在(論点)
1. 会社が特定の個人のために連帯保証や代物弁済を行う行為は、定款の「目的の範囲内」といえるか。 2. 会社の代表者が、自身の親権下にある者のために会社を代表して行う保証行為は、会社と社員との直接の取引にあたるか。
規範
法人の能力(目的の範囲内)については、定款に記載された目的に限定されず、目的達成に必要な行為をすべて含む。その必要性は、行為を定款の記載から客観的・抽象的に観察して判断すべきである。また、商法上の社員による利益相反取引の制限は、社員と会社との間に直接成立する取引に限定され、会社が第三者の債務を保証する行為には及ばない。
重要事実
コーヒー輸入販売等を目的とする合資会社の上告会社において、代表者Dが、自身が親権者として法定代理人を務めるAの債務を担保するため、会社として連帯保証を行い、かつ会社所有物件につき停止条件付代物弁済契約を締結した。会社側は、これらの行為が定款の目的外であり、また旧商法75条(現行の利益相反取引規制に相当)に抵触し無効であると主張した。
あてはめ
1. 上告会社の目的はコーヒー輸入販売等であるが、本件連帯保証等の行為を客観的・抽象的に観察すれば、特段の反証がない限り、目的遂行に必要な事項として目的の範囲内に属すると評価される。 2. 本件取引は、DがAの代理人として負担した債務につき会社が保証するものであり、会社と社員(D)との間で直接利害が対立する契約ではない。したがって、社員と会社間の直接取引を制限する規定は適用されない。
事件番号: 昭和32(オ)91 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
食肉並びに加工品の販売等を目的とする甲会社が、平素取引関係のある、軍需用食料品の納入、食用獣鳥および活獣の販売、斡旋等を目的とする乙会社を援助するため、その金借債務につき、甲会社所有の建物に抵当権を設定し、弁済期に弁済しない場合の代物弁済契約、並びに賃借権設定契約をすることは、甲会社の営業目的を遂行するに必要な事項で、…
結論
本件連帯保証および代物弁済契約は、上告会社の目的の範囲内の行為であり、かつ利益相反取引の制限にも抵触せず、有効である。
実務上の射程
法人の権利能力の範囲について「客観的・抽象的判断説」を確立した判例であり、取引の安全を重視する。民法34条や会社法上の目的の範囲を論じる際の必須規範である。また、利益相反については直接取引該当性を厳格に解する姿勢を示している。
事件番号: 昭和34(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和37年10月2日 / 結論: 棄却
親権者が自己の負担する貸金債務につき未成年の子の所有する不動産に抵当権を設定する行為は、借受金を右未成年の子の養育費に供する意図であつても、民法第八二六条にいう「利益が相反する行為」にあたる。
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。
事件番号: 昭和28(オ)1451 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる営業財産の譲渡は、組織的一体をなす営業財産を譲渡し、かつ譲渡人の経営者的地位を引き継がせる「営業の譲渡」には当たらない。また、代表取締役による代物弁済契約が会社の目的遂行のためになされた場合は、会社の権利能力の範囲内として有効である。 第1 事案の概要:被上告組合は上告会社から地下足袋を買い…
事件番号: 昭和33(オ)767 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記手続において、代理人が本人及び相手方の双方を代理する場合であっても、それが既に成立している法律関係に基づく登記義務の履行であるときは、民法108条本文の禁止する双方代理には当たらない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間の不動産取引に関連し、特定の書面(丙第2号証)が上告人の意思に基…