一 判示の事情のもとでは、本件店舗については、真実の経営者と、経営者名義人の両名による共同占有が成立するものと認めるのが相当である。 二 かりに訴額の算定について違法であつても、これを看過してなされた訴訟行為の効力は無効とはいえない。
一 店舗について共同占有の成立を認めた事例。 二 訴額の算定の違法と訴訟行為の効力。
民法180条,民訴印紙法11条,民訴法22条,民訴法223条
判旨
店舗の真実の経営者が占有している場合であっても、他人に経営者として振舞うよう命じ、その他人も週に一回程度来店して経営者として振舞い店員を指示していたときは、その他人も当該店舗を共同占有していると認められる。また、不法占有による賃料相当額の請求は、特段の事情がない限り、不法行為に基づく損害賠償請求として解釈するのが相当である。
問題の所在(論点)
1. 真実の経営者以外の者が、形式的な経営者として振る舞っているに過ぎない場合であっても、建物の「占有」が認められるか。 2. 賃料相当額の支払請求を不当利得返還請求ではなく不法行為に基づく損害賠償請求として扱うことの可否。
規範
建物の占有の有無は、当該建物を実力的に支配しているか否かによって判断される。真実の経営者以外の者であっても、外部的に経営者として振舞い、かつ内部的な指揮命令系統においても経営者として機能している実態がある場合には、その者による占有(共同占有)を認めることができる。また、不法占有に基づく金員請求については、原告の合理的な意思解釈に基づき、不法行為による損害賠償請求と解する。
重要事実
上告人A1は、店舗を譲り受けて真実の経営者として菓子店を経営・占有していた。一方で、A1は店員に対し、上告人A2の名義で経営しているように振る舞うよう命令していた。A2もこれに応じ、週に一度程度来店しては経営者として振る舞い、店員もA2を経営者と認識してその指示に従っていた。被上告人は、両名に対し建物の不法占有を理由として、賃料相当損害金の支払を求めて提訴した。
あてはめ
1. 占有について:A1が実質的な経営者であることは事実だが、A2も週1回来店して経営者として振る舞い、店員に直接指示を与え、店員もこれに従っていた事実に照らせば、A2は単なる名義貸しにとどまらず、本件店舗を実力的に支配しているといえる。したがって、A2にも占有が認められる。 2. 請求の性質について:被上告人は訴訟の経緯において「家賃相当損害金」を請求する旨陳述しており、これは所有権侵害に対する損害の補填を求める趣旨であると解される。したがって、これを不法行為に基づく請求とみることは妥当である。
結論
A2についても本件店舗の占有使用が認められ、両名に対する共同不法行為に基づく賃料相当損害金の支払請求を認容した原判決は正当である。
実務上の射程
建物の明渡請求や損害賠償請求において、被告が「自分は名義上の店長に過ぎず、実質的な支配権はない」と抗弁した場合の再反論として有効である。外形的な経営実態や従業員への指揮命令権の行使という事実を拾うことで、共同占有・共同不法行為を基礎付ける論理として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)968 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数人が共同の不法行為により建物を占有し、所有者の権利を侵害している場合、各占有者はその占有部分について共同不法占拠者として損害賠償義務や明渡義務を負う。原判決に法令の解釈に関する誤りがあったとしても、認定された事実から結論が正当であれば上告は棄却される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告…