特別事情に基づく損害賠償の要件である、当事者がその事情を予見しまたは予見しうるべきであつたかどうかは、債務不履行の時を標準として判断すべきである。
特別事情に基づく損害賠償の要件である当該事情の予見の有無を判断する基準時。
民法416条
判旨
特別事情に基づく損害賠償(民法416条2項)の要件である予見可能性の有無は、債務不履行時を標準として判断すべきである。そのため、履行不能後に生じた新株発行等の特別事情は、履行不能時に予見可能でない限り、賠償範囲に含まれない。
問題の所在(論点)
民法416条2項にいう「特別の事情」の予見可能性を判断すべき基準時はいつか。
規範
特別事情(民法416条2項)に基づく損害賠償の要件である、当事者がその事情を予見し、または予見し得たかどうかの判断は、債務不履行時(履行不能時)を標準として判断するのが相当である。
重要事実
債権者(上告人)は、売買代金債務の担保として債務者(被上告人)に株券1,000株を交付した。債務者の妻がこの株券を無断で第三者に預託し、第三者がこれを売却したため、昭和35年4月12日に株券の返還債務は履行不能となった。その後、同年6月27日に当該株式の発行会社の取締役会で新株発行が決定された。債権者は、履行不能によって新株引受権を喪失した損害(特別損害)の賠償を求めた。
あてはめ
本件において債務不履行(履行不能)が発生したのは、株券が第三者によって売却された昭和35年4月12日である。これに対し、損害の基礎となる新株発行の取締役会決議がなされたのは同年6月27日であり、履行不能から2か月以上経過している。他に特段の事情がない限り、履行不能の時点において、将来の新株発行という特別事情を予見することは不可能である。
結論
予見可能性の基準時は債務不履行時である。本件の新株発行は履行不能の時点で予見し得たものとはいえないため、これによる損害は賠償の範囲に含まれない。
実務上の射程
債務不履行に基づく損害賠償において、416条2項の適用範囲を画定する重要な先例である。答案では、遅延利息以外の特別損害(転売利益の喪失や本件のような新株引受権の喪失)を論じる際、必ず「債務不履行時」を基準時として予見可能性を論証する必要がある。
事件番号: 昭和32(オ)331 / 裁判年月日: 昭和36年4月28日 / 結論: 棄却
売買の目的物の価格が謄貴した場合に、契約価格と履行期における市価との差額は、債務不履行により通常生ずべき損害と解すべきである。