候補者中にD姓の者が一一名もあり、なかにD辰雄があつても「Dつねお」と記載された投票はD宗雄に対する投票と認めるべきである。
投票の効力
公職選挙法68条7号
判旨
「Dつねお」と記載された投票は、候補者「D宗雄(むねお)」への投票の意図をもち、その氏名の一部を誤記したものと認められる限り、同候補者に対する有効投票となる。
問題の所在(論点)
公職選挙法に基づき、候補者の氏名を誤記したと解される投票(いわゆる疑問票)が、特定の候補者に対する有効投票として認められるか。特に、類似の氏名を持つ別の候補者が存在する場合の判断が問題となる。
規範
公職選挙法における自書投票の有効性は、投票用紙の記載が候補者の氏名の一部を誤記したものであっても、客観的な記載内容から特定の候補者に投票する意思が認められる場合には、当該候補者に対する有効投票として取り扱うべきである。
重要事実
選挙において、候補者の中に「D宗雄(むねお)」と「D辰雄」を含むD姓の者が11名存在していた。その際、「Dつねお」と記載された一票が投じられた。原審は、当該記載が両名の氏名を混記したものではなく、候補者D宗雄に対する投票意思に基づき「む」を「つ」と誤記したものと認定した。
あてはめ
本件の「Dつねお」という記載は、D辰雄とD宗雄の氏名を混記したものとは認められない。むしろ、候補者D宗雄(むねお)を指す意図で、その読みの一部である「む」を「つ」と書き間違えたものと解するのが自然である。D姓の候補者が多数(11名)存在し、その中にD辰雄がいたとしても、誤記の態様や投票意思の認定を左右するものではないため、D宗雄への有効投票と評価される。
結論
「Dつねお」という記載は、候補者D宗雄に対する有効投票と認められる。
実務上の射程
自書式投票における「誤記」と「混記(他候補者との混同)」の区別を示す。類似氏名の候補者が存在する場合でも、特定の候補者への投票意思が認定可能であれば有効性を肯定できる。行政事件訴訟や選挙訴訟における有効投票の判定基準として活用される。
事件番号: 昭和31(オ)646 / 裁判年月日: 昭和32年5月7日 / 結論: 棄却
Dと記載された投票は、候補者Aの氏名を誤記したものとは認められない。