免責的債務引受がなされたからといつて、当然に従前の根抵当権の消滅をきたすものではない。
免責的債務引受により当然従前の根抵当権は消滅するか。
民法第3編第1章総則(債務引受),民法375条
判旨
免責的債務引受がなされた場合であっても、債権者が抵当権の同一性を維持しつつ確保する旨の合意が認められる特段の事情があるときは、当然には抵当権は消滅しない。
問題の所在(論点)
免責的債務引受が行われた場合において、債権者の担保権(根抵当権・抵当権)は当然に消滅するか。また、抵当権を存続させる合意の成否が問題となる。
規範
免責的債務引受によって旧債務者がその債務を免れる場合、特段の合意がない限り、旧債務者の提供した担保等は消滅するのが原則である。しかし、債権者が従前と同一順位・同一効力の担保権を確保する趣旨で債務引受が行われ、その旨の合意(予約)が認められる場合には、抵当権は消滅せず新債務者の債務のために存続する。
重要事実
債権者Dは、債務者Eらに対する債権回収を図るため、第三者Fに対して抵当権付きのまま債務を引き受けるよう勧誘した。Dとしては、本件不動産上に従前と同一の抵当権が確保されない限り、既存の抵当権登記の抹消を承諾する意思はなかった。債務引受契約(乙1号証)には抵当権抹消に関する条項があったが、これはDの地位を確保する方法の一つを定めたに過ぎず、抵当権を消滅させる趣旨ではなかった。その後、Dは本件抵当権に基づき競売を申し立てたが、上告人らは債務引受により抵当権は消滅したと主張して争った。
あてはめ
本件では、Dが債務の引受けを勧誘した目的が債権回収の維持にあり、従前の抵当権と同一の効力を確保することが契約の前提となっていた。契約書上の抵当権抹消に関する記載も、Dの優先的地位を確保するための手段を例示したものと解され、抵当権を確定的に消滅させる趣旨は認められない。したがって、債務引受があったからといって直ちに抵当権が消滅したとはいえず、実質的に同一性を維持したまま存続していると評価できる。
結論
免責的債務引受があっても、抵当権を存続させる趣旨の約定が認められる以上、抵当権は消滅しない。したがって、抵当権に基づく競売申立ては適法である。
実務上の射程
民法改正後の472条の4第1項(引受人への担保移転)の解釈において、改正前からの判例法理として重要である。実務上は、債務引受の際に担保権を移転させる債権者の意思表示(同条2項)の有無が焦点となるが、本判決は契約の背景事情からそのような合意を認定する手法を示しており、意思表示の解釈において射程を有する。
事件番号: 昭和36(オ)853 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
賃料等の供託書を受け取つたからといつて、転貸を暗黙に承諾したものとはいえない。