父が子に代り子所有建物について一切の管理処分をなす権限を有していた場合に、父が第三者に対し子の代理名義で右建物を他に担保に供する代理権を授与する権限をも与えられていたものと認めることができる。
代理権授与の代理権の存在を肯定した事例。
民法99条
判旨
管理処分の一切の権限を有する代理人は、再代理人を選任して目的物を担保に供する代理権を授与する権限も有する。また、売却処分を他人に一任し、その便宜のために登記名義を移転させる行為は、所有権の信託的譲渡として有効である。
問題の所在(論点)
1. 管理処分の一切の権限を有する代理人が、さらに第三者に対して担保設定の代理権を授与することができるか。2. 売却処分の依頼に伴い、便宜上行われた所有権移転登記(信託的譲渡)の効力はどうなるか。
規範
1. 本人から不動産の一切の管理処分権限を与えられた代理人は、その権限の範囲内において、第三者に対し本人を代理して当該不動産を担保に供する権限を授与する(再代理人の選任等)権限も有する。2. 売却処分を目的として、その手段として受任者に所有権移転登記を了する行為は、信託的譲渡として私法上有効な権利移転となる。
重要事実
建物所有者Dの父Eは、Dから本件建物の一切の管理処分権限を付与されていた。Eは訴外Fに対し、Dの代理人名義で建物を担保に供する代理権を授与した。Fは、その権限に基づき訴外Gとの間で契約を締結した。その後、Gは訴外Hに対し、建物の売却処分を一切一任し、その方法として登記名義をHに移転させた。
あてはめ
1. EはDから一切の管理処分権限を認められていたのであるから、その包括的な権限には、自ら処分するのみならず、Fを介して担保に供する権限を与えることも含まれる。したがって、FがDの代理人として行った行為の効果はDに帰属する。2. GからHへの移転は、売却処分を一任する目的で行われたものであり、形式的な移転であっても信託的譲渡として実体上の所有権移転が認められる。ゆえに、H名義の登記は有効である。
結論
本件建物を担保に供した契約の効力は本人に及び、また、売却処分のために行われた信託的譲渡に基づく所有権移転登記は有効である。
実務上の射程
代理権の範囲が「一切の管理処分」と広範な場合、再代理に近い権限授与も含まれうることを示す。また、譲渡担保や信託的譲渡の有効性を肯定する基礎的な論理として、処分権限の授与実態から登記の有効性を導く際に活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1180 / 裁判年月日: 昭和41年1月13日 / 結論: 棄却
不動産の贈与を予定し、受贈者たるべき者の関与なくして右不動産について同人名義の所有権取得登記手続がなされた場合でも、後日右不動産の贈与が行われたときは、受贈者は、右不動産所有権の取得をもつて第三者に対抗することができる。