甲が乙の無権代理人として乙所有の不動産を丙に売り渡す契約を締結した後乙から右不動産の譲渡をうけてその所有権を取得するにいたつた場合において、丙が民法第一一七条にいう履行を選択したときは、前記売買契約は、甲と丙との間に成立したと同様の効果を生ずる。
無権代理人が無償代理行為の目的物を取得した場合における法律関係
民法113条,民法117条
判旨
無権代理人が後日その不動産の所有権を取得した場合、民法117条により、相手方が履行を選択したときは、無権代理人と相手方との間に契約が成立したのと同様の効果を生ずる。
問題の所在(論点)
無権代理人が後発的に目的物の所有権を取得した場合、民法117条の履行責任の追及により、無権代理人と相手方との間に直接契約関係が成立したのと同様の効果が生ずるか。また、その場合、無権代理人は売主として解除権を行使し得るか。
規範
無権代理人が目的物の所有権を取得した場合、民法117条に基づき、相手方の選択に従い履行の責めに任ずるべきである。相手方が履行を選択した場合には、無権代理人と相手方との間に当該売買契約が成立したのと同様の法律効果が生ずるものと解する。
重要事実
上告人Aは、所有者Dの無権代理人として本件不動産を被上告人に売り渡した。その後、AはDから当該不動産を譲り受け、所有権を取得した。被上告人は履行を求めたが、Aは被上告人の代金支払債務不履行を理由に契約の解除を主張した。原審は、本人による追認の存否を確認せず、Aは売主ではないとしてAの解除主張を排斥した。
あてはめ
本件において、Aは無権代理行為の後に不動産の所有権を取得している。被上告人が履行を選択した以上、民法117条によりAは履行責任を負い、Aと被上告人の間に売買契約が成立したのと同様の効果が生ずる。そうであれば、Aは当該契約における売主としての地位を享受するため、相手方の代金支払債務不履行があれば、契約を解除できる可能性がある。原審は、本人Dによる追認がなされ、効果がDに帰属したという特段の事情がない限り、Aを売主として解除の存否を審理すべきであった。
結論
無権代理人が所有権を取得し、相手方が履行を選択した以上、無権代理人と相手方の間に契約が成立したのと同様の効果が生じる。したがって、無権代理人は売主としての権利を行使し得る。
実務上の射程
無権代理人が本人を相続した場合ではなく、特定の事由により所有権を取得した場合の117条の履行責任の帰結を明らかにしたもの。無権代理人が売主としての地位に立つことを認めるため、相手方からの履行請求だけでなく、無権代理人側からの解除主張等も可能になる点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和37(オ)1443 / 裁判年月日: 昭和39年4月24日 / 結論: 棄却
父が子に代り子所有建物について一切の管理処分をなす権限を有していた場合に、父が第三者に対し子の代理名義で右建物を他に担保に供する代理権を授与する権限をも与えられていたものと認めることができる。