一筆の土地の一部を売り渡した者は当該部分の所有権移転登記手続をする義務がある。
一筆の土地の一部を売り渡した者の所有権移転登記義務。
民法177条
判旨
売買契約が成立した場合、別段の意思表示がない限り、契約成立と同時に所有権移転登記義務が生じる。また、分筆登記や地積表示の更正が未了であっても、売主は買主に対し特定の土地部分の移転登記義務を負う。
問題の所在(論点)
1.売買契約に基づく所有権移転登記義務の履行期はいつか。2.分筆登記が経由されていない、あるいは登記上の地積と実測が符合しない場合に、移転登記請求は認められるか。
規範
不動産の売買契約が成立したときは、特約等の別段の意思表示がない限り、契約の成立と同時に、売主は買主に対して所有権移転登記手続をなすべき義務を負う(民法176条、555条)。また、一筆の土地の一部を目的とする売買において、当該部分が特定されている以上、分筆登記の経由や地積表示の整合性は、移転登記手続を命ずる判決の妨げとはならない。
重要事実
被上告人(買主)は、上告人(売主)が所有する宅地(約77坪)のうち、被上告人の建物が所在する特定の土地部分(本件土地。実測約28坪)を、面積35坪として買い受ける売買契約を締結した。被上告人は上告人に対し、本件土地の所有権移転登記手続を求めたが、上告人は分筆登記の未了や履行期、地積の不一致等を理由に争った。
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。
あてはめ
1.売買契約において履行期に関する別段の意思表示がない以上、契約成立と同時に上告人は移転登記手続義務を負う。したがって、原審が履行期に言及せず義務を認めたことに理由不備はない。2.本件土地は図面等により特定されており、上告人はその所有権移転登記手続をなすべき義務がある。仮に分筆手続の地積表示が実測と符合しないとしても、買主は判決に基づき、売主に代位して地積更正手続を経た上で移転登記を申請できるため、判決の時点であらかじめ分筆登記等の完了を確認する必要はない。
結論
本件売買契約に基づき、上告人は被上告人に対し、本件土地部分の所有権移転登記手続をなすべき義務を負う。上告を棄却する。
実務上の射程
物権変動の時期および登記義務の発生時期に関する原則を示す。答案上、履行期の抗弁がない限り、契約成立により直ちに登記請求権が行使可能である旨の根拠となる。また、未分筆地の特定一部の移転登記請求において、分筆等の手続的瑕疵が請求の妨げにならないことを論じる際に有用である。
事件番号: 昭和39(オ)1397 / 裁判年月日: 昭和41年2月24日 / 結論: 棄却
知事の許可なくしてなされた農地の売買契約においても、特段の事情のないかぎり、売主は知事に対し所定の許可申請手続をなすべき義務を負い、また、もしその許可があつたときは、買主のため所有権移転登記手続をなすべき義務を負担するに至るものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和35(オ)488 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買における知事の許可は、売買による所有権移転の効力発生要件に過ぎず、売買契約そのものの成立要件ではない。したがって、農地売買契約の成立日は、知事の許可の日ではなく、現実に売買の合意がなされた日となる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で農地の売買契約が締結され、その後、当該売買に基…
事件番号: 昭和33(オ)943 / 裁判年月日: 昭和35年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、その自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づくものであるときは、適法に認められる。また、付随的義務の不履行を理由とする売買契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:本件土地の売買において、履行期等に関する特約の有無が争点となった。控訴代理人は当初、特約が存在する旨の準備書面を提…