所有権の行使に民法第一条第三項の適用はあるが、所有権の取得に同条項の適用はない。
所有権取得と民法第一条適用の有無。
民法1条
判旨
民法177条の「第三者」には、先行する物権変動について悪意である者も含まれる。また、登記簿上の地積と実測地積が相違していても、当該移転登記の対抗力は否定されない。
問題の所在(論点)
1. 民法177条の「第三者」として保護されるためには、先行する物権変動につき善意である必要があるか。2. 登記簿上の地積と実態が相違する場合、その登記に対抗力が認められるか。
規範
1. 民法177条の不動産物権変動における「第三者」とは、登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者を指し、その主観(善意・悪意)は問わない。2. 登記簿上の地積表示と実測地積との間に相違がある場合であっても、不動産の特定性に欠けるところがない限り、当該登記の対抗力が失われることはない。
重要事実
被上告人は、上告人会社から土地(登記簿上一五坪余)を分筆し、所有権移転登記を受けた。しかし、実際の譲渡対象は道路拡張予定地(八坪余)のみであった。また、上告人側は、被上告人が所有権を取得したことを知っていた(悪意であった)ことや、登記簿の地積と実態が異なることを理由に、被上告人の取得した登記の対抗力を争った。
事件番号: 昭和37(オ)93 / 裁判年月日: 昭和38年5月24日 / 結論: 棄却
甲が乙より土地を賃借した後、右土地の所有権が乙、丙、丁と順次譲渡された場合において、丙は乙の実子であり、丁は乙、丙その他これと血族または姻族関係にある者の同族会社であつて、その営業の実態は乙の個人営業をそのまま引き継いだものであり、乙がその中心となつている等原判示のような事情(原判決理由参照)があるときは、甲の右賃借権…
あてはめ
1. 民法177条は第三者の善意悪意を区別していない。したがって、被上告人の所有権取得を上告人が知っていたとしても、被上告人は登記を具備することで上告人に対し所有権を主張できる。2. 登記簿表示の地積が実坪と相違していたとしても、そのことのみをもって登記の対抗力が否定されるものではない。本件においても、被上告人は適法に移転登記を具備しており、所有権取得を対抗できる。
結論
被上告人は悪意の第三者に対しても登記をもって所有権を対抗でき、登記簿の地積相違もその効力を妨げない。上告棄却。
実務上の射程
不動産二重譲渡等における「背信的悪意者」排除の論理を検討する前段階として、単純悪意者が177条の第三者に含まれることを確認する際に用いる。また、地積相違があっても登記の特定性が維持される限り対抗力が認められるという実務的指針を示す。
事件番号: 昭和35(オ)405 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
不動産の不法占有者は民法第一七七条にいう第三者には当らない。
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
事件番号: 昭和32(オ)879 / 裁判年月日: 昭和34年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産を占有するにつき何ら正当な権原を有しない者は、不動産登記法上の登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する「第三者」(民法177条)に当たらない。したがって、正当な権原のない占有者に対しては、登記がなくとも所有権の譲受を対抗できる。 第1 事案の概要:被上告人は、前所有者(前主)から本件土…
事件番号: 昭和47(オ)845 / 裁判年月日: 昭和48年4月12日 / 結論: 棄却
甲が乙所有の土地を買い受けて占有している事実を知つている乙の親族丙が、甲の所有権取得登記がされていないのに乗じ、甲の所有権取得の効果を対抗要件の欠缺により失わしめる目的で、乙との間の土地交換契約により右土地の所有権を取得しその旨の登記を経た等判示の事情がある場合には、丙はいわゆる背信的悪意者として、甲の土地所有権取得に…