民法第八二六条は、親権者の一方がその子と利益相反し他の親権者が利益相反関係にない場合にも適用がある(同旨、昭和三七年(オ)第一三四〇号同三九年四月二一日第三小法廷判決、裁判集(民)第七三号二九九頁)。
親権者の一方がその子と利益相反し他の親権者が利益相反関係にない場合と民法第八二六条の適用。
民法826条
判旨
父母が共同親権者である場合において、親権者の一方が子と利益相反する行為をなすときは、民法826条により特別代理人の選任を要し、特別代理人と利益相反関係にない他方の親権者が共同して法定代理を行うべきである。
問題の所在(論点)
父母が共同親権者である場合において、親権者の一方のみが子と利益相反関係にあるとき、他方の親権者が単独で、または特別代理人の選任なしに子を代理してなした行為の効力(民法826条の適用の有無)。
規範
民法826条(利益相反行為)の規定は、父母が共同親権者であって、その一方が子と利益相反し、他方が利益相反関係にない場合にも適用される。この場合、利益相反する親権者は自ら代理権を行使できず、特別代理人の選任を求めた上で、その特別代理人と、利益相反関係にない他方の親権者が共同して子を代理すべきである。
重要事実
未成年者である被上告人の父Dは、被上告人所有の本件土地について、裁判外の和解に基づき代物弁済契約を締結した。この際、父Dと子(被上告人)との間には利益相反関係が認められた。上告人は、利益相反関係にない母Eが本件契約に被上告人の代理人として関与している以上、特別代理人の選任がなくても本件代物弁済契約は有効であると主張した。
事件番号: 昭和37(オ)1340 / 裁判年月日: 昭和39年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親権者の一方が子と利益相反し、他の一方が利益相反関係にない場合でも民法826条が適用され、特別代理人の選任を要する。 第1 事案の概要:未成年者である被上告人の父Fは、自己の債務を担保するため、被上告人名義の土地について代物弁済契約を締結した。この際、父Fは被上告人と利益相反関係にあったが、共同親…
あてはめ
本件における代物弁済契約は、親権者である父Dと子の利益が相反するものである。民法826条は共同親権の一方のみが利益相反する場合も含むと解される。したがって、父Dは子を代理できず、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要がある。本件では、利益相反のない母Eが関与してはいるものの、選任された特別代理人と母Eが共同して代理すべき手続きを欠いているため、有効な代理権の行使とは認められない。なお、本件土地が父の出捐により取得された名義借りの財産であるとの主張は証拠上認められず、子の財産として扱われるべきである。
結論
特別代理人の選任を欠いたままなされた本件代物弁済契約は、民法826条に違反し、無権代理行為として無効である。
実務上の射程
共同親権者の一方のみに利益相反事由がある場合でも、他方の親権者の単独代理(民法818条3項但書参照)や合意による代理は認められず、必ず特別代理人の選任が必要となることを示した。答案上は、共同親権における代理権行使の原則(共同代理)と利益相反規定の交錯として整理する。
事件番号: 昭和36(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和37年2月27日 / 結論: 棄却
法定代理人と本人との利益相反の有無は、もつぱら、その行為自体を観察して判断すべきであつて、当該借入金の用途が何であるかというような当該契約に至つた縁由を考慮して判断すべきではない。
事件番号: 昭和33(オ)968 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
一 親権者たる父母の一方に民法第八二六条第一項にいう利益相反関係があるときは、利益相反関係のない親権者と同項の特別代理人とが共同して子のための代理行為をなすべきである。 二 甲が乙の親権者として、自己の事業上の債務のため乙所有の不動産を 代物弁済として他に譲渡する行為は、乙が甲の事業により生活上の利 益を受けており、そ…
事件番号: 昭和32(オ)1149 / 裁判年月日: 昭和37年2月23日 / 結論: 破棄差戻
被担保債権発生のための更改契約が法定代理人の利益相反行為として無効であるとされた以上、それでもなお、抵当権設定を受諾したとみるべき事実の説示がないかぎり、抵当権設定行為の有効を判断したのは理由不備である。
事件番号: 昭和35(オ)504 / 裁判年月日: 昭和38年4月2日 / 結論: 棄却
右登記が右仮登記の本登記手続としてなされ、所有権取得の権利の実際に合致し、登記義務者の意思に基づいてなされたものである以上、当該本登記の抹消登記手続を求めることはできない。