被担保債権発生のための更改契約が法定代理人の利益相反行為として無効であるとされた以上、それでもなお、抵当権設定を受諾したとみるべき事実の説示がないかぎり、抵当権設定行為の有効を判断したのは理由不備である。
理由不備の違法ありとされた事例
民訴法395条1項,民訴法395条6項
判旨
親権者が子の債務者を交替させる更改契約を利益相反行為として行った場合、当該更改契約は無効であり、その債務を被担保債務として設定された抵当権も付随的に無効となる。
問題の所在(論点)
親権者が子を代理して行った債務者の更改が利益相反行為として無効である場合、その更改後の債務を担保するために設定された抵当権の効力はどうなるか。
規範
親権者が子を代理して行う行為が利益相反行為(民法826条)に該当し無効である場合、当該行為によって生ずべき債務は成立しない。抵当権の附従性に基づき、被担保債務が存在しない以上、これを目的に設定された抵当権設定登記も当然に無効となる。例外的に抵当権が有効となるためには、更改が無効であってもなお抵当権設定を受諾したとみなし得る特段の事情を要する。
重要事実
上告人の親権者である訴外Dは、自身が被上告人に対して負担していた債務を、債務者の交替により上告人に負担させる更改契約を締結した。この際、Dは上告人の法定代理人として行為したが、当該更改契約は利益相反行為として法律上無効と判断された。しかし、本件土地には当該更改後の債務を被担保債務とする抵当権設定登記がなされていたため、その効力が争われた。
事件番号: 昭和36(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和37年2月27日 / 結論: 棄却
法定代理人と本人との利益相反の有無は、もつぱら、その行為自体を観察して判断すべきであつて、当該借入金の用途が何であるかというような当該契約に至つた縁由を考慮して判断すべきではない。
あてはめ
本件更改契約は、親権者Dが子である上告人を代理して、自己の債務を子に承継させるものであり、利益相反行為として無効である。そうすると、上告人は更改によって債務者となることはなく、抵当権の被担保債務として表示された債務は存在しない。抵当権の附従性から、不存在の債務について設定された本件抵当権は無効と言わざるを得ない。原審は諸般の事情から登記を有効としたが、更改無効の場合でも上告人が抵当権設定を受諾したとみるべき十分な事実は認定されていない。
結論
本件更改契約は無効であり、被担保債務が存在しない以上、本件抵当権も無効である。これと異なる判断を示した原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
利益相反行為による無効が、その行為から派生した担保権設定などの後続行為にどのような影響を及ぼすかという局面で、抵当権の附従性を貫徹する規範として活用できる。答案上は、まず826条の利益相反該当性を論じ、無効の帰結として附従性から抵当権の無効を導く流れとなる。
事件番号: 昭和32(オ)240 / 裁判年月日: 昭和33年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無権代理人が本人の代理人として法律効果を本人に帰属させる趣旨で契約を締結した場合、その際に作成された文書が偽造されたものであるか否かにかかわらず、無権代理が成立する。 第1 事案の概要:Dは、Eから代理権を授与されていないにもかかわらず、Eの代理人として、法律効果をEに帰属させる趣旨で、被上告会社…
事件番号: 昭和32(オ)121 / 裁判年月日: 昭和33年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】意思表示の動機が、表示等により法律行為の内容とされた場合には、その動機に関する認識の不一致は「法律行為の要素の錯誤」に該当し、当該意思表示は無効となる。 第1 事案の概要:被上告人は、上告会社の社員から融資の約束を受けた。被上告人は、この融資を受けられることを前提(動機)として、本件抵当権設定契約…
事件番号: 昭和43(オ)946 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
親権者が第三者から金員を借り受けるにあたり、その未成年の子が連帯債務を負担し、また、同債務を担保するため、その子の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付賃借権の設定をなし、さらに、右代物弁済の予約完結の意思表示により右不動産の所有権が第三者に移転したことを即決和解または私法上の和解契約において確認する行為は、民法八二…
事件番号: 昭和30(オ)247 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: その他
債務者が、他の債権者に十分な弁済をなし得ないためその利益を害することになることを知りながら、ある債権者のために根抵当権を設定する行為は、詐害行為にあたるものと解すべきである。