外国人間の離婚訴訟において、原告が一九五〇年以来アメリカ陸軍軍属として単身で日本に来ているが、被告は日本に来たことも日本に住所を有したこともなく、原告主張の離婚原因たる事実が原告が被告から遺棄されたこと、被告が行方不明であることその他これに準ずるものでない場合には、右離婚訴訟は裁判権なしとして訴を却下すべきである。
外国人間の離婚訴訟につき裁判権がないとして訴が却下された事例。
人訴法1条,法例16条
判旨
離婚の国際的裁判管轄は、被告の住所が日本にあることを原則とするが、原告が遺棄された場合や被告が行方不明の場合等には、例外的に原告の住所地である日本の管轄を認めるべきである。本件では、被上告人が一度も来日せず日本に住所を持たず、かつ例外的な事情も認められないため、日本の裁判管轄は否定される。
問題の所在(論点)
渉外的離婚訴訟において、被告が日本に住所を有しない場合に、日本の裁判所に国際的裁判管轄が認められるか。被告の住所地主義を貫くべきか、あるいは例外を認めるべきかが問題となる。
規範
離婚の国際的裁判管轄については、被告の住所が我が国にあることを原則とする。もっとも、①原告が遺棄された場合、②被告が行方不明である場合、③その他これらに準ずる場合には、国際私法上の正義公平の理念に照らし、例外的に原告の住所が我が国にあることをもって、我が国の国際的裁判管轄権を認めるべきである。
重要事実
上告人(夫)は1950年以来、アメリカ陸軍軍属として単身で日本に滞在しているが、被上告人(妻)は来日したことがなく、日本に一度も住所を有したことがない。上告人は、日本において被上告人に対し離婚訴訟を提起した。
あてはめ
原則として被告の住所が日本にないため管轄は否定される。例外検討について、本件上告人が主張する事由は、判例が示す「遺棄された場合」や「被告が行方不明の場合」などの特段の事情には該当しないことが自明である。したがって、被告の住所地主義の例外を認めるべき「国際私法生活における正義公平の理念にもとる結果」が生じるとはいえない。
結論
本件訴訟につき我が国の裁判権は認められず、訴えを不適法として却下した原審の判断は正当である。上告棄却。
実務上の射程
現在は人事訴訟法3条の2各号に明文化されているが、本判例(最高裁昭和39年3月25日大法廷判決を引用)は、被告住所地主義の原則と、当事者間の公平や権利保護の観点からの修正(「遺棄・行方不明・準ずる場合」)という判断枠組みを確立したリーディングケースとして、法解釈の基礎となる。答案上は、条文の趣旨を説明する際や、条文のあてはめで「特段の事情」を論じる際の考慮要素として活用できる。
事件番号: 平成5(オ)764 / 裁判年月日: 平成8年6月24日 / 結論: 棄却
日本に居住する日本国籍の夫がドイツに居住するドイツ国籍の妻に対する離婚請求訴訟を日本の裁判所に提起した場合において、妻が先にドイツの裁判所に提起した離婚請求訴訟につき妻の請求を認容する旨の判決が確定し、同国では右両名の婚姻は既に終了したとされているが、日本では、右判決は民訴法二〇〇条二号の要件を欠くため効力がなく、婚姻…