大韓民国国籍を有する父には扶養能力がなく、扶養能力を有する母が子を監護養育している場合に、離婚に伴う未成年の子の親権者を父に限定する大韓民国民法九〇九条を適用して親権者を父と指定することは、わが国の公序良俗に反し、法例三〇条により許されない。
大韓民国民法九〇九条を適用して親権者を父と指定することが法例三〇条により許されない場合
法例30条,民法819条2項,大韓民国民法909条
判旨
外国法を準拠法とする場合に、その適用結果が子の福祉を重視する日本の社会通念に著しく反するときは、公序条項(法の適用に関する通則法42条、旧法例30条)により当該外国法の適用を排除し、日本法を適用して親権者を指定すべきである。
問題の所在(論点)
離婚に伴う親権者の指定について、準拠法(父の本国法)を適用した結果、常に父が親権者となり、母が指定される余地がないことが「公の秩序又は善良の風俗」(法例30条、現行の通則法42条)に反するか。
規範
外国法の内容自体ではなく、その外国法を適用した結果がわが国の公の秩序又は善良の風俗に反するか否かによって判断する(公序条項の適用)。具体的には、子の監護・養育に関する事項については「子の福祉」を最優先とするわが国の社会通念に照らし、外国法の適用結果がこれに著しく反する場合には、当該外国法を適用せず、法廷地法である日本法を適用する。
重要事実
韓国籍の夫婦(日本在住)の離婚に伴う親権者指定が問題となった事案。準拠法である韓国民法(当時)によれば、離婚後の親権者は常に父と定められており、母が指定される余地はなかった。しかし、父(上告人)は経済的扶養能力を欠き、実際には母(被上告人)が日本で出生した未成年の子2人を現に監護養育しており、父を親権者とすることは不適当であることが顕著であった。
あてはめ
本件では、夫婦ともに日本に居住し、子も日本で出生・養育されている。実態として、父は扶養能力がなく親権者として不適当であるのに対し、母には扶養能力があり現に監護を行っている。このような状況下で、韓国民法の規定に基づき画一的に父を親権者とすることは、子の福祉を何よりも重視するわが国の社会通念・法的秩序に真っ向から反する。したがって、法例30条により韓国民法の適用を排除すべきである。
結論
本国法の適用を排除し、わが国の民法819条2項を適用して、母(被上告人)を親権者と定めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
国際私法上の公序条項(通則法42条)の具体的適用例として重要。特に、身分法分野において「子の福祉」が日本の国際私法上の公序を構成することを明示した射程の長い判例である。答案では、外国法の適用結果が日本の家族観や児童保護の理念と乖離する場合の解決策として引用する。
事件番号: 昭和38(オ)1412 / 裁判年月日: 昭和39年6月23日 / 結論: 棄却
裁判上の離婚の場合には、親権者指定の申立がなくても、離婚の判決をする裁判所が、職権をもって、父母の一方を親権者と指定することを要すると解すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)386 / 裁判年月日: 昭和32年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】夫婦間の性格の相違や夫の過去の非行がそれ自体で直ちに離婚原因とはならないとしても、これらに加え諸般の事情を総合して判断し、婚姻を継続し難い重大な事由があると認められる場合には、民法770条1項5号の離婚原因に該当する。 第1 事案の概要:被上告人(妻)が上告人(夫)に対し、性格の相違や上告人の過去…