日本に居住する日本国籍の夫がドイツに居住するドイツ国籍の妻に対する離婚請求訴訟を日本の裁判所に提起した場合において、妻が先にドイツの裁判所に提起した離婚請求訴訟につき妻の請求を認容する旨の判決が確定し、同国では右両名の婚姻は既に終了したとされているが、日本では、右判決は民訴法二〇〇条二号の要件を欠くため効力がなく、婚姻はいまだ終了しておらず、夫がドイツの裁判所に離婚請求訴訟を提起しても婚姻の終了を理由に訴えが不適法とされる可能性が高いときは、夫の提起した離婚請求訴訟につき日本の国際裁判管轄を肯定すべきである。
日本に居住する日本人のドイツに居住するドイツ人に対する離婚請求訴訟につき日本の国際裁判管轄が肯定された事例
民訴法第1編第1章裁判所,民訴法200条
判旨
被告が我が国に住所を有しない場合であっても、当事者間の公平、裁判の適正・迅速の理念(条理)に基づき、原告の住所地や訴訟提起の障害等の事情を考慮して、我が国の国際裁判管轄を肯定できる。特に、相手方国での判決が国内で効力を有さず、かつ相手方国での再度の提訴が事実上不可能な場合には、原告の権利保護の観点から管轄が認められる。
問題の所在(論点)
被告が国内に住所を有しない離婚請求事件において、我が国の国際裁判管轄を肯定できるか。特に、相手国で既に離婚判決が出ているが国内でその効力が否定される場合に、条理上どのような考慮が必要か。
規範
被告の住所地が日本にない場合でも、当事者間の公平や裁判の適正・迅速の理念といった「条理」に従って決定すべきである。具体的には、被告の不利益に配慮しつつ、原告が被告の住所地国で提訴することに法律上または事実上の障害があるか否か、その程度を考慮し、原告の権利保護に欠けることのないよう留意して判断する。
重要事実
日本国籍の妻(被上告人)とドイツ国籍の夫(上告人)はドイツで婚姻し居住していたが、夫が同居を拒絶。妻は長女を連れて帰国し日本に居住した。夫はドイツで離婚訴訟を提起し、公示送達を経て離婚認容判決が確定した。しかし、当該判決は日本国内では公示送達による不備(民訴法118条2号、当時の200条2号)から効力が認められず、日本法上は婚姻が継続していた。妻は日本で離婚訴訟を提起した。
あてはめ
被告(夫)はドイツに居住しているが、ドイツでの離婚判決は日本での効力が否定され、日本国内では依然として婚姻が継続する「不均衡な身分関係」にある。妻がドイツで再度提訴しても、同国では既に離婚が成立しているため不適法とされる可能性が高く、妻にとって日本での提訴以外に権利救済の方法がない。このような法律上・事実上の障害がある状況下では、被告の応訴負担を考慮してもなお、日本に管轄を認めることが条理にかなう。
結論
我が国の国際裁判管轄を肯定した原審の判断は正当であり、離婚請求を認めることができる。
実務上の射程
現行の民訴法3条の3第8号(身分関係の訴え)や3条の9(特別の事情による却下)の解釈指針となる。本判決は原則として被告住所主義を維持しつつ、原告が遺棄された場合や被告住所地での提訴が不可能な場合など、個別具体的な事情に基づく管轄の例外(条理)を明確化したものであり、国際的な身分関係の不一致を解消するための救済法理として機能する。
事件番号: 昭和36(オ)957 / 裁判年月日: 昭和39年4月9日 / 結論: 棄却
外国人間の離婚訴訟において、原告が一九五〇年以来アメリカ陸軍軍属として単身で日本に来ているが、被告は日本に来たことも日本に住所を有したこともなく、原告主張の離婚原因たる事実が原告が被告から遺棄されたこと、被告が行方不明であることその他これに準ずるものでない場合には、右離婚訴訟は裁判権なしとして訴を却下すべきである。