ドイツから自動車等を輸入している日本法人甲がドイツに居住する日本人乙に対して契約上の金銭債務の履行を求める訴訟について、右契約が、ドイツ国内で締結され、甲が乙に同国内における種々の業務を委託することを目的とするものであり、右契約において日本国内の地を債務の履行場所とすること又は準拠法を日本法とすることが明示的に合意されていたわけではなく、乙が二〇年以上にわたりドイツ国内に生活上及び営業上の本拠を置いており、乙の防御のための証拠方法も同国内に集中しているなど判示の事実関係の下においては、日本の国際裁判管轄を否定すべきである。
日本法人がドイツに居住する日本人に対して契約上の金銭債務の履行を求める訴訟につき日本の国際裁判管轄が否定された事例
民訴法第1編第1章裁判所,民訴法5条
判旨
我が国の民事訴訟法が定める裁判籍が国内にある場合、原則として国際裁判管轄を肯定すべきだが、当事者間の公平や裁判の適正・迅速を期する理念に反する「特段の事情」がある場合には、例外的にこれを否定すべきである。
問題の所在(論点)
被告が国内に住所を有しない場合において、国内に裁判籍(義務履行地等)が認められるとしても、なお国際裁判管轄を否定すべき「特段の事情」を認めることができるか。
規範
国際裁判管轄の決定については、当事者間の公平や裁判の適正・迅速の理念による条理に従うべきである。具体的には、民訴法の裁判籍のいずれかが国内にあるときは原則として管轄を認めるが、当該場所で裁判を行うことが上記理念に反する「特段の事情」がある場合には、これを否定するのが相当である。
重要事実
日本法人である上告人は、ドイツ在住の被上告人に対し、現地での自動車買付等の業務を委託する契約をドイツ国内で締結した。その後、上告人は預託金の返還を求め、日本国内(上告人の本店所在地)を義務履行地として日本での訴訟を提起した。被上告人は20年以上ドイツに拠点を置き、証拠も同国内に集中していた一方、契約に日本を履行地とする等の合意はなかった。
あてはめ
本件契約はドイツで締結され、現地での業務を目的とするものであり、日本を履行地とする合意もない。被上告人は20年以上ドイツに生活・営業拠点を置き、防御のための証拠も同国内に集中しているため、日本での応訴は予測可能性を欠き、多大な負担となる。他方、上告人は同国からの輸入業者であり、ドイツでの提訴が過大な負担とはいえない。以上から、日本での裁判は公平・適正・迅速の理念に反する特段の事情がある。
結論
我が国の国際裁判管轄を否定すべき特段の事情が認められるため、本件訴えを却下した原審の判断は正当である。
実務上の射程
平成23年改正前民事訴訟法下のリーディングケースであるが、現行法3条の9(特別の事情による訴えの却下)の解釈指針として重要である。原則として法定管轄を認めつつ、具体的個別事情(証拠の偏在、被告の負担等)により管轄を否定する「特段の事情(現行法の特別の事情)」の枠組みとして答案で活用する。
事件番号: 昭和47(オ)762 / 裁判年月日: 昭和47年11月10日 / 結論: 棄却
第一裏書人が白地裏書をしたまま保管中盗取された約束手形につき、金融機関が同手形の所持人から金融取引によりこれを取得するに当たつて右所持人等につき原判決理由説示のような調査をしたときは、右所持人が当該手形を所持することにつき疑念を抱かず、かつ、当該手形の振出人および第一裏書人に対し直接照会をしなかつたとしても、右金融機関…
事件番号: 平成17(行ヒ)47 / 裁判年月日: 平成20年2月28日 / 結論: 破棄自判
生活保護を受けている者が,保護を受け始めて間もない時期に,外国への渡航費用として約7万円という金額の支出をすることができたなど判示の事実関係の下においては,同人が,そのころ少なくとも上記渡航費用を支出することができるだけの額の,本来その最低限度の生活の維持のために活用すべき金銭を保有していたことが明らかであり,上記渡航…
事件番号: 昭和54(オ)29 / 裁判年月日: 昭和54年9月6日 / 結論: 破棄差戻
土地の売買契約が成立したか賃貸借が成立したかどうかの認定判断にあたり、判示のような証拠関係のもとにおいては、契約締結の際授受された五万円が土地の時価に照らして売買代金額とみられるか、それとも賃貸借の敷金と賃料の合計額とみられるかについて考慮を払うことなく、土地の賃貸借が成立したと認定判断することは、経験則ないし採証法則…