一 詐害行為取消訴訟において、被告とすべきものは、財産返還請求の相手方たる受益者または転得者のみで足り、債務者を共同被告とすべきではない(明治四四年三月二四日大審院判決、民録一七輯一一七頁、大正六年三月三一日大審院判決、民録二三輯五九六頁等)。 二 取消を請求する債権者は受益者または転得者の悪意を立証する必要がなく、受益者または転得者においてその善意であることの立証責任を負うものとすることは、大審院判例の認めるところであつて(大正七年九月二六日大審院判決・民録二四輯一七三〇頁、昭和六年九月一六日大審院判決・民集一〇巻八〇六頁等)、今なお、その変更の必要を認めない。
一 詐害行為取消訴訟における被告。 二 受益者または転得者の悪意についての立証責任。
民法424条
判旨
詐害行為取消訴訟において被告とすべきは受益者または転得者のみであり、主文に取消の表示が欠落していても理由中で判断されていれば明白な誤謬として処理し得る。
問題の所在(論点)
詐害行為取消訴訟における被告適格、立証責任の所在、および保全債権発生後に取得した財産が取消対象に含まれるか。また、主文における取消表示の遺脱が判決破棄事由となるか。
規範
1. 詐害行為取消訴訟の被告適格は、財産返還請求の相手方である受益者または転得者にのみ認められ、債務者を共同被告とする必要はない。 2. 詐害行為取消権の対象は、保全債権の発生時に債務者が有していた財産に限定されない。 3. 受益者または転得者の善意については、当該受益者・転得者側が立証責任を負う。 4. 判決主文に取消の明示を遺脱しても、理由中で取消しの判断がなされていれば、それは明白な誤謬にすぎない。
重要事実
債務者A1は、他に資産がなく多額の債務を負担している状況において、唯一の資産である本件採掘権を実子であるA2に譲渡した。債権者は、A2を被告として当該譲渡行為の取消しと、それに伴う登録抹消手続を求めて提訴した。一審および原審は取消しを認める判断を理由中で示したが、主文において「譲渡行為を取り消す」との一項を遺脱していたため、被告側が上告した。
あてはめ
本件では、債務者A1が唯一の資産を子であるA2に譲渡しており、無資力状態での処分行為として詐害性が認められる。被告側は「保全債権発生時の財産に限定されるべき」と主張するが、金銭債権は債務者の一般財産を担保とするものであるから、発生後の取得財産も対象となる。また、主文に取消しの文言がない点については、理由中で詐害行為該当性が認定され、抹消登録義務が導かれている以上、取消しの判断は実質的になされており、単なる表示上の誤謬といえる。
結論
被告に適格を欠く点はない。また、主文の遺脱は判決破棄の理由にはならず、上告は棄却される。受益者の善意が立証されない限り、本件譲渡の取消しと抹消登録請求は認められる。
実務上の射程
現在は民法424条の7第1項により、被告を受益者(または転得者)に限定することが明文化されており、本判例はその法理を裏付ける。また、主文遺脱に関する判示は、実務上の判決更正事由としての性質を有する。司法試験等では、被告適格の特定や立証責任の分配を論じる際の基礎知識として用いる。
事件番号: 昭和34(オ)554 / 裁判年月日: 昭和37年8月28日 / 結論: 棄却
会社が他に鉱業権を譲渡した場合に、右会社の債権者または株主であるからといつて、ただその一事により直ちに、同人が右鉱業権の譲受人に対し、その譲渡契約が無効であることを理由として右鉱業権が会社に属することの確認を求める利益を有するとはいえない。
事件番号: 昭和49(オ)181 / 裁判年月日: 昭和49年12月12日 / 結論: 棄却
民法四二四条所定の詐害行為の目的たる権利の転得者から悪意で更に転得した者は、たとえその前者が善意であつても、同条に基づく債権者の追及を免れることができない。
事件番号: 昭和26(オ)840 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の記載が取得原因において事実と異なっていたとしても、現在の権利関係に合致している限り、その登記の抹消を請求することはできない。 第1 事案の概要:亡Dは、隠居前に本件不動産を被上告人に対して贈与した。しかし、本件不動産に関する登記上の取得原因は、この贈与という事実とは異なる内容で記載され…
事件番号: 昭和33(オ)1018 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐害行為取消権(民法424条1項)が認められるためには詐害行為時及び取消権行使時の双方で無資力である必要があるが、行為時の無資力があれば行使時の無資力は推定され、相手方が資力回復を主張立証すべきである。 第1 事案の概要:債権者である被上告人が、債務者Dによる詐害行為の取消しを求めて提訴した事案。…