一 請求の一部につき裁判の脱漏があつても、これをもつて上告適法の理由となし得ない。 二 判決には法律の解釈適用の論拠を説示する必要はない。
一 裁判の一部脱漏と上告理由 二 判決に法律の解釈適用の論拠を説示することの要否
民訴法195条,民訴法394条,民訴法191条
判旨
裁判所が判決の理由において、事実の認定および認定した事実に対する法律適用の結果を十分に示している場合には、法律の解釈適用の論拠を具体的に説示し、あるいは適用条文を個別に掲示しなくても、判決理由の説示として欠くるところはない。
問題の所在(論点)
判決理由において、適用した具体的な法条の掲示や、法律の解釈適用の論拠の説示が欠けている場合、民事訴訟法上の判決理由不備の違法(現行法312条2項6号参照)となるか。
規範
判決には、認定した事実およびそれに対する法律適用の結果が示されるべきであるが、必ずしも法律の解釈適用の詳細な論拠を説示したり、個別の法条を逐一掲示したりする必要はない。認定事実からどの法条が適用されたかを知るに十分な説示があれば、判決理由の不備とはならない。
重要事実
上告会社が訴外Dに対して支払った仮払金が貸付金と認定され、その未収利息相当額がDに対する賞与であると判断された事案である。原審は、税務署長による源泉徴収決定を適法とした第一審判決を引用したが、判決文中に具体的な適用法条(所得税法等)の番号や、その解釈の論拠を詳細に記述していなかった。これに対し、上告人は理由不備等の違法があるとして上告した。
事件番号: 昭和29(オ)64 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得額の算定について、仕入商品に対する利益率を推計により認定すること、および雑損金の有無を原審の判断に委ねることは、法令の解釈に関する重要な主張を含まない適法なものとされる。 第1 事案の概要:上告人は、税務当局による所得算定の基礎となった利益率の推計方法および雑損金の不算入につい…
あてはめ
本件において、原審は仮払金を貸付金と認定し、その未収利息を賞与と認定した第一審判決を正当として引用している。この説示により、所得税法上の賞与の認定、源泉徴収義務および税額算定に関する各規定が適用されたことは客観的に明らかである。したがって、判決文上に個別の法条を明示し、あるいは裁判所の見解を詳細に論証せずとも、法律適用の結果は十分に示されているといえる。
結論
判決理由において適用法条や解釈論拠の説示がなくても、事実認定と適用の結果が示され、適用法条を判別し得る場合には、理由不備の違法はない。
実務上の射程
民事訴訟における判決書の記載事項(民訴法253条1項)の程度を示す。主文を導き出すために必要な事実認定と法的判断の結論が示されていれば足り、詳細な学説的検討や条文番号の列挙は必須ではない。実務上、理由不備を上告理由とする際の「必要な理由」の限界を画する。また、裁判の脱漏については追加判決(258条)で対応すべきであり、上告理由にはならない点も実務上重要である。
事件番号: 昭和36(オ)84 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 破棄自判
所得税青色申告書についてなされた更正処分の通知書に、更正の理由として、「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」と記載されており、また、その審査決定の通知書に、請求棄却の理由として、「あなたの審査請求の趣旨、経営の状況その他を勘案して審査しますと、小石川税務署長の行なつた再…
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。
事件番号: 昭和29(オ)557 / 裁判年月日: 昭和32年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通郵便による発送および還付の不存在という事実のみから、直ちに当該郵便物の到達を経験則上断定することはできない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人に対し決定通知書を普通郵便で発送し、これが返送されなかった事実がある。また、被上告人の近隣に住む第三者Eに対しても同時期に同様の通知を発送しており、…