判旨
判決主文における建物や動産の表示が、建坪や数量等の具体的な数値を含まないものであっても、目録の記載によって目的物の敷地が特定されている場合には、主文の不明確を理由に失当とはならない。
問題の所在(論点)
判決主文における目的物の表示において、建坪や数量等の具体的な数値が記載されていない場合、主文が不明確として違法となるか(民事訴訟における主文の特定性の程度)。
規範
判決主文の明確性は、強制執行の可能性を担保するために必要とされるが、目的物の表示は必ずしも数値による詳細な特定(建坪や数量の明示)を要するものではない。当該表示が他の記載(目録による土地の特定等)と相まって、客観的に目的物を識別し得る程度に特定されていれば、主文は明確であると解される。
重要事実
上告人は、第一審判決主文の表示が不明確であると主張した。当該主文では、目的物について「(イ)地上の木造亜鉛葺平家建店舗兼住宅及びバラック建物置」および「(ロ)地上の材木その他の物件」と記載されていたが、具体的な建坪や材木等の数量に関する表示は欠けていた。一方で、当該建物および物件が所在する(イ)地および(ロ)地については、目録の記載によって特定されていた。
あてはめ
本件において、目的物である店舗兼住宅、バラック建物置、および材木等は、それ自体に建坪や数量の記載はない。しかし、これらは目録によって特定された「(イ)地」および「(ロ)地」という特定の土地上に存在するものとして表示されている。土地が目録により特定されている以上、その地上にある建物や動産を「(イ)地上の」「(ロ)地上の」と指定することで、執行の対象となるべき物件は客観的に特定されているといえる。したがって、詳細な数値の記載がなくとも、主文が不明確であるとはいえない。
結論
主文は明確であり、原判決に違法はない。建坪や数量の表示がなくても、土地の特定等により目的物が識別可能であれば、主文の特定として十分である。
事件番号: 昭和36(オ)1191 / 裁判年月日: 昭和39年7月21日 / 結論: 破棄差戻
建物収去、土地明渡を命ずる判決において、主文と引用の図面および判決理由とを対照しても、基点が不特定のため建物の収去部分と土地の明渡部分の範囲が現地のいかなる地域にあたるかを特定できないときは、主文不明確の違法を免れない。
実務上の射程
判決主文の特定に関し、厳格な数値記載までは要求せず、他の記載との一体的な把握により執行対象が識別できれば足りるとする実務的基準を示す。もっとも、実務上は執行の混乱を避けるため、可能な限り図面や数値を用いるべきであり、本判決はあくまで最低限の特定性を肯定したものと解すべきである。
事件番号: 昭和24(オ)174 / 裁判年月日: 昭和25年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】給付判決における目的物の表示が簡略であっても、現場に臨むことで対象範囲を判別でき、強制執行等に支障がない程度に特定されていれば、給付の範囲が確定していないとはいえない。 第1 事案の概要:土地所有者である被上告人らが、隣接する各自の所有地(イ地及びロ地)上に家屋を所有して占有する上告人らに対し、建…
事件番号: 昭和36(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
賃貸借契約の成立が抗弁とされている場合に、右契約締結に至る事情は、当事者の主張がなければ認定判示が許されないものではない。
事件番号: 昭和36(オ)378 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
経済的変動により賃料額が不相当となつたときは、協定のうえこれを増減することができるし、期間を更新することもできる旨の約款があつても、その賃貸借を一時使用のためのものと認定できないことはない。
事件番号: 昭和32(オ)496 / 裁判年月日: 昭和34年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決において表示された境界や地点が、図面や特定の基準点(境界線や排水溝等)からの距離・方向によって現地と対応可能であれば、現地特定に欠けるところはない。 第1 事案の概要:上告人は、判決が示した特定の地点(は・に)について現地特定を欠くと主張した。原判決および添付図面では、当該地点は被上告人所有の…