賃貸借契約の成立が抗弁とされている場合に、右契約締結に至る事情は、当事者の主張がなければ認定判示が許されないものではない。
賃貸借契約締結に至る事情の認定と弁論主義。
民訴法186条
判旨
土地の賃貸借契約において賃料の具体的な取極めが行われなかったとしても、当事者間の合意の経緯や周辺事情を総合して賃貸借の成立を認めることができる。
問題の所在(論点)
賃料の具体的な金額が定められていない場合において、土地の賃貸借契約の成立を認めることができるか。
規範
契約の成立には要素的項目についての合意が必要であるが、賃貸借契約において賃料の具体的金額が即時に合意されていない場合であっても、合意に至る事情や他方で提供される利益等の客観的状況からみて、有償の合意が認められるときは賃貸借の成立を肯定し得る。
重要事実
上告人と被上告人の先代Dとの間で本件土地の利用に関する合意がなされた。Dは、上告人に対し、自身が貸与していた建物(浴場部分)の賃料を、当時の一般相場に比して著しく低額(月額5万円)に据え置いていた。このような背景があり、本件土地の利用について具体的な賃料額の取極めは行われなかったが、当事者間には土地の使用を認める合意が存在した。上告人は使用貸借であると主張したが、被上告人は賃貸借の抗弁を主張した。
事件番号: 昭和35(オ)1274 / 裁判年月日: 昭和37年3月15日 / 結論: 棄却
一 賃料額が具体的に決まらなくても、後日協定すべき相当賃料を支払う旨の合意があれば、賃貸借は有効に成立する。 二 家屋台帳の記載の誤りに基因し、所有権保存登記の建物所在表示が現実の地番と異つて記載されていても、原判決認定の事情(原判決の引用する第一審判決理由参照)から、社会通念上右番地の記載によつて当該建物を表示するに…
あてはめ
本件では、賃料の具体的な取極めが行われなかったものの、その背景にはDが上告人に貸与していた別物件の賃料を相場の半額程度に据え置いていたという事情が存在した。このような特殊な利害関係や貸借に至る経緯を考慮すれば、無償の使用貸借ではなく、実質的な対価関係が存在する賃貸借契約と評価するのが相当である。具体的な金額の不備は、契約成立自体を妨げるものではない。
結論
本件土地の利用については賃貸借契約が成立したものと認められ、使用貸借であるとの上告人の主張は排斥される。
実務上の射程
契約の成立認定において、対価関係が不明確であっても、周辺の経済的状況や過去の取引経緯から「有償性」を推認できる場合の規範として機能する。司法試験では、契約の成否が争点となる事実認定問題において、形式的な金額合意の有無だけでなく、実質的な対価の有無を検討する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
事件番号: 昭和36(オ)378 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
経済的変動により賃料額が不相当となつたときは、協定のうえこれを増減することができるし、期間を更新することもできる旨の約款があつても、その賃貸借を一時使用のためのものと認定できないことはない。
事件番号: 昭和36(オ)297 / 裁判年月日: 昭和36年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法388条の法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において土地の上に建物が存在することが不可欠である。 第1 事案の概要:上告人(被告)個人の所有名義となっている建物について、被上告人がその権利を主張した。これに対し、上告人は法定地上権の成立や権利濫用等を主張して争った。原審は、挙示された…
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…