判決言渡前に関与裁判官の転補があつても、右転補以前に評議が成立していたと認められるかぎり、判決成立過程にかしはない。
判決言渡前の裁判官の転補と判決成立のかしの有無。
民訴法395条1項1号
判旨
判決の基礎となる評議は、口頭弁論に関与した裁判官が異動する前に成立していれば足り、その後の言渡し時に裁判官が異動していても、判決成立の過程に違法はない。
問題の所在(論点)
口頭弁論に関与した裁判官が、判決言渡し前に他裁判所へ異動した場合、その判決の成立過程に違法(構成の違法等)が認められるか。具体的には、評議が裁判官の在任中に成立していたか否かが問題となる。
規範
判決を構成する評議は、当該事件の口頭弁論に関与した裁判官によって行われ、かつ、その裁判官らがその職にある間に成立していなければならない。評議が適法に成立している以上、その後の判決言渡し時に一部の裁判官が異動していたとしても、判決の成立過程に違法は認められない。
重要事実
本件において、原審は昭和33年12月3日に口頭弁論を終結した。関与した裁判官は石井、喜多、坂口の3名であり、判決はこの3名の評議によって成立した。その後、喜多裁判官は昭和34年1月25日に、坂口裁判官は昭和35年8月15日にそれぞれ他裁判所の判事に補せられた。原判決の言渡しは昭和35年11月30日に行われた。上告人は、裁判官の異動により判決成立過程に違法があると主張した。
事件番号: 昭和31(オ)445 / 裁判年月日: 昭和31年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定において、相反する当事者の陳述や証人の証言から、いずれを信用して採用し、いずれを排斥するかは、特段の事情がない限り裁判所の自由な心証に委ねられる。 第1 事案の概要:上告人は、消費貸借の弁済期に関する認定、および被上告人による弁済の提供の事実認定に際し、原審が特定の陳述を信用し、他を排斥し…
あてはめ
職権調査によれば、本件の評議が喜多裁判官の異動日(昭和34年1月25日)以降に成立したことを示す事証はない。したがって、判決の基礎となる評議は、同裁判官が異動する前の同月24日以前に成立したものと推認される。このように、口頭弁論に関与した裁判官らによって在任中に適法な評議がなされている以上、言渡しが異動後であっても、判決の成立手続に瑕疵はないといえる。
結論
原判決成立の過程に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判官の交代と判決の効力に関する実務上の限界を示す。口頭弁論終結から言渡しまでの間に裁判官が交代した場合でも、評議さえ在任中に行われていれば、裁判官の更迭(民事訴訟法249条2項)等の問題を生じさせないことを確認した事例である。
事件番号: 昭和36(オ)154 / 裁判年月日: 昭和36年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書の当事者表記に明らかな誤記がある場合でも、判決の更正決定によって修正されたときは、当該誤記を理由として判決を破棄することはできない。 第1 事案の概要:原判決において、被控訴人と記載すべき箇所を「控訴人」と誤記する当事者の表記ミスが存在した。しかし、原審(控訴審裁判所)は、上告審の判断前に昭…
事件番号: 昭和25(オ)66 / 裁判年月日: 昭和27年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定の矛盾を理由とする判決理由の齟齬の主張に対し、原審が認定した事実は相互に矛盾せず同時に認定可能であるとして、上告を棄却した判例である。 第1 事案の概要:上告人は、原審が認定した各事実が相互に相容れないものであると主張し、そのような矛盾する事実を同時に認定した原判決には理由の齟齬があるとし…
事件番号: 昭和35(オ)312 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定の前提となる証拠の取捨判断は、特段の事情がない限り事実審の専権に属する事項であり、これに対する不服は上告理由とならない。 第1 事案の概要:被上告人が本件土地建物を大正4年頃に訴外Dから買い受け、現に所有しているとの事実を一審判決が認定し、原審もこれを引用した。これに対し、上告人らは独自の…
事件番号: 昭和35(オ)234 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
甲乙丙三棟の建物を所有する債務者が、未登記の甲建物の所有権保存登記をなすべく司法書士に委任したところ、甲建物を主たる建物、乙丙建物を付属建物と表示する登記がなされ、次いで、債権者の手により甲乙丙建物を目的物とする抵当権設定登記が経由されたのに対し、抵当権設定契約の不存在を理由として右抵当権設定登記の抹消登記手続を請求す…