公簿上の地目が農地であつても、売買契約当時、現況が農地でない土地については、右契約に知事の許可は必要でない。
公簿上農地である土地の売買と知事の許可の要否。
民法555条,農地法3条
判旨
農地法上の「農地」に該当するか否かは、公簿上の地目にかかわらず、土地の現況によって判断すべきである。そのため、売買契約当時、客観的に農地としての現況を失っている土地については、同法3条等の許可を要しない。
問題の所在(論点)
公簿上の地目が農地であっても、現況が農地でない土地の売買において、農地法(当時の法制下における知事等の許可規定)の適用があるか、すなわち「農地」の判定基準が問題となった。
規範
農地法(旧自作農創設特別措置法等を含む農地規制法規)の適用対象となる「農地」であるか否かは、登記簿等の公簿上の記載ではなく、当該土地の客観的な現況によって決定される。すなわち、長期間にわたり耕作の目的に供されておらず、かつ、容易に耕作可能な状態に復元できない程度に地目が変更されている場合には、もはや農地には当たらないと解する。
重要事実
対象土地は公簿上の地目が「田」であったが、昭和15、16年頃から材料置場として使用されていた。地上の一部には監視員宿泊用の建物が建てられていたが、戦災により焼失した。売買契約当時、当該土地は相当程度埋め立てられており、田としての現況はなく、耕作も全く行われていない状態であった。
事件番号: 昭和27(オ)597 / 裁判年月日: 昭和33年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、登記簿上の所有者を対象とした処分は、真実の所有者と異なる場合であっても、所定の不服申立手続を経て確定した以上、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:農地委員会は、登記簿上でD名義となっていた農地につき、Dが不在地主であるとして買収計画を樹立し、昭和…
あてはめ
本件土地は、売買契約より約10年以上前から材料置場や建物敷地として利用されており、農地としての利用実態が失われていた。契約当時においても、埋立てによって物理的に農地(田)としての外形を喪失しており、現に耕作もなされていない。したがって、公簿上の表示にかかわらず、本件土地は農地法上の「農地」としての実体を欠いているといえる。
結論
本件土地は農地に該当しないため、売買に際して知事の許可は不要である。よって、許可がないことを理由とする契約の無効主張や登記無効の訴えは認められない。
実務上の射程
農地法の許可を欠く契約の効力を争う場面において、現況主義を確立した重要な判例である。答案上は、農地法3条や5条の許可の要否が問われる際、一時的な休耕ではなく「客観的に現況が変更されているか」を認定する際の規範として活用する。
事件番号: 昭和38(オ)311 / 裁判年月日: 昭和40年10月19日 / 結論: 棄却
現に耕作の目的に供されている土地であつても、不法に開墾されたものであり、開墾の経緯について原審が確定したような事情(原判決理由参照)があるときは、農地法第二条第一項にいう農地にあたらないと解するのが相当である。
事件番号: 昭和40(オ)493 / 裁判年月日: 昭和41年2月1日 / 結論: 棄却
不動産登記簿上の地目が農地になつている土地であつても、現況が宅地であれば、農地ではない。
事件番号: 昭和28(オ)1266 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
農地所有権の移転後、移転登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた農地買収処分は、当然無効と解すべきではない