所有権に基づく土地明渡請求訴訟において、第一審以来原告の土地所有を認めこれを原告が既に訴外者に売却したと主張して来た被告が控訴審(同六回弁論期日)になつてはじめて原告の右所有を争い、原告先代から被告自身が所有権を取得したと主張することは、右訴訟の経過に鑑み故意かしからずとするも重大な過失によつて時機に遅れた防禦方法を提出するものと認めざるを得ないし、それが訴訟の完結を遅延せしむべきものであることは明白であるとして、控訴裁判所が右主張を却下したことは正当である。
一 時機に遅れた防禦方法の却下が正当とされた事例 二 第一、二審における自己の側の訴訟代理権欠缺の論旨に対し記録を検するも右訴訟委任の手続はすべて適式に行われていることが認められその欠缺を疑うべき点は見当らないとして所論が排斥された事例
民訴法139条1項
判旨
当事者の主張が時機に後れて提出された場合、それが故意または重大な過失によるものであり、かつ訴訟の完結を遅延させることになると認められるときは、裁判所は民事訴訟法に基づき却下することができる。
問題の所在(論点)
当事者が提出した主張が「時機に後れた攻撃防御方法」に該当し、裁判所がこれを却下したことの適法性が、民事訴訟法上の却下要件(故意・過失および訴訟完結の遅延)に照らして争われた。
規範
当事者の攻撃防御方法の提出が、故意または重大な過失によって時機に後れてなされ、それによって訴訟の完結を遅延させることになると認められる場合には、裁判所は当該主張を却下することができる(民事訴訟法157条1項、旧法139条1項)。
重要事実
上告人は、第一審および原審において新たな主張(攻撃防御方法)を提出したが、原審はこれを時機に後れたものと判断し、旧民事訴訟法139条1項に基づき却下した。これに対し上告人は、主張の遅延について故意・過失はなく、また訴訟完結を遅延させる目的もなかったと主張して上告した。なお、上告代理人の訴訟代理権の欠缺も主張されたが、記録上適正な手続が認められた。
事件番号: 昭和28(オ)759 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 破棄差戻
一 控訴審において初めて提出した攻撃防禦の方法が、民訴第一三九条にいわゆる時機に後れたるや否やは、第一審以来の訴訟手続の経過を通観してこれを判断すべく、時機に後れた攻撃防禦の方法であつても、当事者に故意または重大な過失が存し、かつ訴訟の完結を遅延せしめたる場合でなければ、同条によりこれを却下し得ないものと解すべきである…
あてはめ
最高裁は、原審の認定判断を記録に照らして肯定した。具体的には、上告人の主張が時機に後れて提出された点、およびその遅延に関する帰責性(故意・過失)の有無について、上告人の反論は単に原審の事実認定を非難するものにすぎず、原審の却下判断を覆すに足りる事情は認められないと判断した。また、訴訟完結を遅延させる目的の有無についても、原審の認定が優先されるべきであるとした。
結論
原審が上告人の主張を時機に後れたものとして却下した判断は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
司法試験においては、民訴法157条1項の却下要件である「故意又は重大な過失」「訴訟の完結を遅延させること」のあてはめにおいて、本判例の趣旨を引用できる。特に、主張の遅延が合理的な理由なく審理の終盤になされた場合の裁判所の裁量的判断を支持する実務上の運用を確認する上で重要である。
事件番号: 昭和32(オ)825 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最終の口頭弁論期日において、従前の防御方法を撤回して新たな防御方法を提出することは、訴訟を徒に遅延させるものであり、時機に後れた攻撃防御方法として却下される。このような提出がなされたこと自体、当事者の重大な過失によるものと認められる。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、第一審以来主張してきた防御…
事件番号: 昭和45(オ)408 / 裁判年月日: 昭和46年4月23日 / 結論: 棄却
借地法一〇条による建物買取請求権の行使に関する主張が、同条所定の時価として裁判所が相当と認める額の代金の支払があるまで、建物の引渡を拒むために同時履行等の抗弁権を行使する前提としてなされたもので、右時価に関する証拠調になお相当の期間を必要とするものである場合において、すでに訴訟は裁判をなすに熟し、さらに審理を続行する必…
事件番号: 昭和33(オ)345 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張していなかった新たな事実上の主張を基礎として原判決の違法をいうことは、民事訴訟の手続上許されない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)からなされた月額5,000円の延滞賃料の催告に基づく契約解除を争っていた。上告人は、上告審において、当該催告より以前…