一 甲乙丙丁戌五名が共同相続した不動産につき、甲が勝手に単独所有権保存登記をした場合、乙丙丁戌が甲に対し請求できるのは、同人らの持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、右保存登記の全部抹消を求めることは許されない。 二 右所有権保存登記の抹消登記手続を求める申立には、更正登記手続を求める申立をも含むものと解するのを相当とする。
一 共有持分に基づく登記抹消請求の許否。 二 所有権保存登記の抹消と更正登記。
民法249条,民訴法186条
判旨
不動産の共同相続人の一人が単独所有権保存登記をした場合、他の共同相続人は、自己の持分を超える部分についてのみ登記の抹消(更正)を請求できる。単独登記も、当該登記名義人の持分の範囲内では実体関係に合致しており、他の相続人は自己の持分を害される限度でしか妨害排除請求権を有しないからである。
問題の所在(論点)
共同相続人の一人が無断で単独名義の保存登記を具備した場合、他の共同相続人は当該登記の全部抹消を請求できるか。あるいは自己の持分に対応する一部の抹消(更正)のみを請求できるにとどまるか。
規範
共同相続された不動産につき、相続人の一人が単独名義の所有権保存登記を経由した場合において、他の共同相続人が当該登記の抹消を請求できる範囲は、自己の持分に相当する範囲に限定される。当該単独名義の登記も、登記名義人自身の有する実体上の持分に関する限りにおいては実体関係に符合しており有効であるため、他の相続人は自己の持分を侵害する部分についてのみ、物権的妨害排除請求権としての抹消(または更正)登記請求権を行使し得るに過ぎない。
重要事実
被相続人Dが死亡し、その妻である上告人が3分の1、実子である被上告人ら4名が各6分の1の割合で本件建物を共同相続した。しかし、上告人は遺産分割の調停手続中に、本件建物を自己の単独所有とする所有権保存登記を経由した。これに対し、被上告人らは、当該保存登記の全部抹消および共有持分の保存登記手続を求めて提訴した。
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …
あてはめ
本件建物について、上告人は3分の1の持分を有しており、上告人名義の単独所有権保存登記は、その3分の1の範囲内では実体上の権利関係と一致している。これに対し、被上告人らが有する権利は各6分の1の共有持分権であり、自己の持分を侵害されていない範囲(上告人の持分部分)については、妨害排除請求としての抹消登記を求める権限を有しない。したがって、被上告人らの請求は、自己の持分合計(6分の4)の範囲においてのみ正当であり、保存登記全部の抹消を求めることはできない。なお、抹消登記の申立てには実質的に同一の目的を達する更正登記の申立てが含まれると解されるため、実体上の持分割合に合致させる更正登記を命じるのが相当である。
結論
上告人名義の単独所有権保存登記のうち、被上告人らの持分に相当する部分に限定して抹消(更正)を認めるべきであり、上告人の持分を含む全部抹消の請求は棄却される。
実務上の射程
共有不動産における不実の単独名義登記に対する妨害排除請求の限界を示す。判旨は「更正登記は実質において一部抹消登記である」とし、抹消請求に更正請求が含まれるとの解釈を示しているため、答案上は訴状の請求趣旨や既判力の範囲に留意しつつ、実体関係との不符合の程度に応じた「一部抹消(更正)」の法理を適用する。
事件番号: 昭和36(オ)315 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: その他
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は乙丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。
事件番号: 昭和29(オ)4 / 裁判年月日: 昭和31年5月10日 / 結論: 棄却
不動産共有者の一人はその持分権に基き、単独で当該不動産につき登記簿上所有名義を有する者に対しその登記の抹消を請求することができる。