原審確定の事実関係のもとでは、補充選挙人名簿が法定の調製期限に調製されず、その縦覧期日に正式に縦覧に供されなかつたことの違法は、選挙の自由を公正を害したものとはいえない。
補充選挙人名簿の違法と選挙の自由公正
公職選挙法26条,公職選挙法27条
判旨
選挙の規定に違反がある場合でも、選挙の自由と公正が害されたと認められず、かつ選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないと認められるときは、公職選挙法205条1項に基づき選挙を無効とすることはできない。
問題の所在(論点)
補充選挙人名簿の調製手続に違法がある場合において、公職選挙法205条1項に基づき選挙が無効となるか。特に「選挙の自由と公正」および「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」の判断枠組みが問題となる。
規範
公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定に違反がある場合」であっても、直ちに選挙が無効となるわけではない。当該違反によって「選挙の自由と公正が害された」か否かを具体的案件に即して判断すべきであり、かつ、その違反が「選挙の結果に異動を及ぼす虞(おそれ)」がないと認められる場合には、選挙の無効は認められない。
重要事実
本件は選挙無効訴訟であり、補充選挙人名簿の調製手続に違法(規定違反)が存在した事案である。原審は、当該名簿の違法が存在しても、選挙の自由と公正が害されたと疑うべき証跡はなく、かつ選挙の結果に異動を及ぼすおそれもないと判断した。
あてはめ
本件補充選挙人名簿の違法については、原審が確定した事実関係によれば、未だ選挙の自由と公正が害されたことを疑うべき証跡がない。また、当該違法の程度や内容に照らせば、本件選挙の得票数や当選人の決定といった「選挙の結果」に異動を及ぼすおそれがないことが十分に推察される。したがって、公職選挙法205条1項の要件を充足しない。
結論
本件補充選挙人名簿の違法は、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないため、本件選挙を無効とすることはできない。
実務上の射程
選挙無効訴訟(公職選挙法205条1項)における、手続違法と選挙無効の因果関係を論じる際のリーディングケースである。答案上では、違反の存在を認めた上で、①自由公正の侵害の有無、②結果への影響(異動のおそれ)の二段階で当てはめを行う際の根拠として活用する。
事件番号: 昭和31(オ)646 / 裁判年月日: 昭和32年5月7日 / 結論: 棄却
Dと記載された投票は、候補者Aの氏名を誤記したものとは認められない。
事件番号: 昭和27(オ)301 / 裁判年月日: 昭和30年2月10日 / 結論: 破棄自判
投票なかばで投票箱を開き投票を取り出した違法は、常に選挙の結果に異動を及ぼす虞があり、選挙無効の原因となる。