一 選挙の効力に関する異議と当選の効力に関する異議とは一つの申立手続で申し立てることができる。 二 不在者投票用封筒および投票用紙請求書の疎明事由記載欄に「私用」、「私事」、「D大学に私用」、「旅行」、「私用旅行」、「東京旅行」、「花見招待」、「お花見」、「私用遊覧」、「E山参拝」と記載しただけでは、公職選挙法第四九条第二号にいう「やむを得ない用務又は事故」の疎明があつたものとはいえない。
一 選挙の効力に関する異議と当選の効力に関する異議とを一つの申立手続で申し立てることの可否 二 公職選挙法第四九条第二号の「やむを得ない用務又は事故」の疎明があつたと認められない事例
公職選挙法202条,公職選挙法206条,公職選挙法49条本文2号,公職選挙法施行令52条
判旨
不在者投票制度は、当日投票の原則に対する例外的措置であるため、その要件は厳格に解釈されるべきであり、疎明が不十分なまま投票用紙を交付する等の管理執行の違法は、選挙無効の原因となり得る。また、一個の異議申立てで選挙無効と当選無効の双方を争うことは、予備的併合の趣旨として許容される。
問題の所在(論点)
1. 不在者投票の請求における「事由の疎明」はどの程度厳格になされるべきか。 2. 不在者投票の管理上の違法は、当選無効のみならず選挙無効の原因となり得るか。 3. 選挙無効と当選無効を一つの手続で争うことの可否。
規範
1. 公職選挙法44条等は当日投票を原則とし、49条の不在者投票は例外的な措置である。そのため、不在者投票の要件(やむを得ない事由の存在等)が具備されているかは、法令に従い厳格に判断されなければならない。 2. 不在者投票の管理執行に違法がある場合、それが「選挙の結果に異動を及ぼす虞」があるときは、公職選挙法205条1項の選挙無効の原因となる。 3. 同一の異議申立てで選挙無効と当選無効を併せて争うことは、前者を主位、後者を予備的な申立てとする趣旨と解され、適法である。
重要事実
仙台市長選挙において、不在者投票の請求に際し、疎明資料として提出された請求書の理由欄に「私用」「旅行」「お花見」等の記載しかなかった事例。また、証明書に被証明者の氏名記載がないものが含まれていた。これに対し、不在者投票の管理執行が違法であるとして選挙無効を求める異議が申し立てられた。有効投票数約15.7万票に対し、上位2名の得票差は559票であったが、違法と判断された不在者投票は906件に及んでいた。
あてはめ
1. 公選法49条2号等の事由に該当するためには、単なる外出・旅行では足りず、当日不在が「やむを得ない」ものであることを要する。本件の「私用」「花見」等の記載は、それ自体でやむを得ない事情を疎明するものとは認められず、交付手続は違法である。 2. 被証明者氏名のない証明書は、誰の不在を証明するものか不明であり、これに基づき投票用紙を交付することも違法である。 3. 違法な投票(906件)が上位候補者の得票差(559票)を上回る以上、「選挙の結果に異動を及ぼす虞」があるといえる。
結論
不在者投票の管理執行に重大な違法があり、それが選挙結果に影響を及ぼす可能性がある以上、当該選挙は無効である。また、選挙無効と当選無効を併せて争う異議申立ては適法である。
実務上の射程
行政訴訟における選挙訴訟の基本判例。不在者投票制度の例外性と厳格な解釈指針、および選挙結果への影響(異動の虞)の判断基準を示す。答案上は、手続違法が選挙無効事由(205条1項)に該当するかを論じる際の規範として活用する。
事件番号: 昭和37(オ)1093 / 裁判年月日: 昭和38年1月31日 / 結論: 棄却
一 不在事由として「出張」、「昼夜運転」、「冷凍魚荷役」、「出港のため」等記載されているに止まる不在証明書による不在者投票であつても、その土地の実情、習慣、選挙人の職業によつて不在事由が認められる以上、右不在者投票を必ずしも違法とはいえない。 二 違法な不在者投票があつた場合に、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるかないか…