一投票区の投票を他の投票区の投票と分離して点検した違法は選挙無効の原因にはならない。
一投票区の投票を他の投票区の投票と分離して点検した違法と選挙の効力
公職選挙法66条2項,公職選挙法205条1項
判旨
公職選挙法66条2項に反する投票の混同点検が行われた場合であっても、当該違反によって選挙の結果に異動を及ぼすおそれが認められない限り、選挙は無効とはならない。
問題の所在(論点)
特定の投票区の投票を他と区別して点検する行為が公職選挙法66条2項に抵触するか。また、投票箱の不適切な管理や混同点検の実施が「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」があるとして選挙無効事由となるか。
規範
公職選挙法上の管理執行手続に違反があっても、直ちに選挙全体が無効となるわけではなく、当該違反が「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」(同法205条1項)がある場合に限り、選挙の全部又は一部が無効となる。
重要事実
本件選挙において、第27投票区の投票が他の投票区の投票と混同されずに分割して点検された。また、152票入りの投票箱が約10時間にわたり開票場外の廊下に無施錠で放置され、一部の開票立会人が当選人決定前に退場する等の管理上の不備があった。
あてはめ
特定の投票区の投票を分割点検したことは同法66条2項に違反する。しかし、本件の状況下では、投票箱が置かれた廊下も開票場の延長と認められ、不正行為が介入する余地はなかった。したがって、分割点検や管理不備という手続違背があったとしても、それによって具体的に当選失当が生じるなど、選挙の結果を左右する客観的可能性(異動を及ぼすおそれ)があったとは認められない。
結論
本件選挙における管理執行上の違法は、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないため、選挙を無効とすべき理由にはあたらない。
実務上の射程
選挙無効訴訟における「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」の判断枠組みを示す。手続違背が認められる場合でも、その違背が具体的・客観的に当選人の順位や得票数に影響し得ない程度であれば、選挙の効力は維持されるという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和31(オ)646 / 裁判年月日: 昭和32年5月7日 / 結論: 棄却
Dと記載された投票は、候補者Aの氏名を誤記したものとは認められない。