投票なかばで投票箱を開き投票を取り出した違法は、常に選挙の結果に異動を及ぼす虞があり、選挙無効の原因となる。
投票なかばで投票箱を開いて投票を取り出した違法と選挙の効力
公職選挙法46条,公職選挙法53条,公職選挙法205条
判旨
公職選挙法205条1項にいう「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」とは、現実に不正行為が行われたことが立証されなくても、客観的に見て選挙の公正を著しく疑わしめるような違法事実が存在すれば、それによって選挙の結果が左右された可能性がある場合を指す。
問題の所在(論点)
投票時間中に権限のない者が投票箱を開函し、投票用紙を別容器に移して移動させたという選挙規定違反がある場合、現実に不正行為が立証されなくても、公職選挙法205条1項の「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある」といえるか。
規範
公職選挙法205条1項の「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」とは、選挙規定に違反する事実が、客観的にみて選挙の公正を著しく疑わしめるに足り、不正行為が行われ得る可能性を有する場合をいう。現実に不正行為が行われたか否かを問わず、そのような違法事実が存在する場合には、常に選挙の結果に異動を及ぼす可能性があると解すべきである。
重要事実
山形県内の議会議員および長の選挙において、投票事務に従事した村役場吏員が、投票時間中に独断で投票箱を開函し、その時点での投票(議員および長の各255票)を林檎の空箱に移し替えて投票所ではない2階へ持ち運んだ。暫くして投票を元の箱に戻し、他の投票所の分と混入して開票が行われた。原審は、具体的事情を総合すれば不正行為が介在したとは認められないとして、選挙を有効とした。
事件番号: 昭和27(オ)621 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 破棄差戻
開票管理者が、開票事務終了後、開票所以外の場所において一部の開票立会人の面前で投票入封筒の封印を破棄し在中の投票を取り出し再調査した違法は、常に選挙の結果に異動を及ぼす虞のある場合にあたる。
あてはめ
本件における投票箱の不当な開函および投票用紙の移動という事実は、著しく選挙の公正を疑わしめるに足りる重大な違法である。このような状況下では、不正行為が行われ得る客観的な可能性が明らかである。原審のように「現実に不正が発覚しない限り有効」と解すると、当事者が口裏を合わせた場合に不正が表面化せず、選挙の公正に対する疑惑を解消できない不都合が生じる。したがって、現実に不正が行われたか否かにかかわらず、当該違法事実自体によって選挙の結果に異動を及ぼす虞があると認められる。
結論
本件選挙は公職選挙法205条1項に基づき無効とされるべきである。よって、原判決を破棄し、選挙を無効とした裁決を取り消す。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続的違法が「選挙の結果に異動を及ぼす虞」の要件を満たすかの判断基準を示した重要判例である。答案では、単なる形式的違反にとどまらず「選挙の公正を著しく疑わしめる(客観的蓋然性)」レベルの違反がある場合に、個別の不正の立証を待たずに選挙無効を導くロジックとして活用する。
事件番号: 昭和31(オ)506 / 裁判年月日: 昭和31年9月25日 / 結論: 棄却
投票なかばで投票箱を開いた違法があつても、その目的、態様、情況によれば、不正行為は行われず、不正行為を行う可能性もうかがわれず、選挙の公正に疑惑を招く事態もなかつた場合は、選挙を無効とすべきではない。
事件番号: 昭和36(オ)200 / 裁判年月日: 昭和36年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙事務従事者による不正行為や開票録表示数の不真正は、それが選挙の管理執行に関する規定違反にあたり、選挙の結果に影響を及ぼす蓋然性がある場合には、公職選挙法205条1項に基づき選挙を無効とする理由になり得る。 第1 事案の概要:本件選挙において、投票所及び開票所の選挙事務従事者が不正行為を行った。…