開票管理者が、開票事務終了後、開票所以外の場所において一部の開票立会人の面前で投票入封筒の封印を破棄し在中の投票を取り出し再調査した違法は、常に選挙の結果に異動を及ぼす虞のある場合にあたる。
開票管理者が、開票事務終了後、開票所以外の場所において一部の開票立会人の面前で投票入封筒の封印を破棄し在中の投票を取り出し再調査した違法と選挙の効力
公職選挙法64条,公職選挙法67条,公職選挙法70条,公職選挙法205条,公職選挙法施行令76条
判旨
開票終了後に適法な手続を経ず投票入封筒の封印を破棄して再調査を行うことは、公職選挙法の規定に違反し、現実に不正行為が行われたか否かにかかわらず、常に「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」(205条1項)に該当する。
問題の所在(論点)
開票終了後の不適法な封印破棄・再調査という選挙規定違反がある場合、現実に不正が行われた証拠がなくても、公職選挙法205条1項の「選挙の結果に異動を及ぼす虞」が認められるか。
規範
選挙規定の違反が「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」(公職選挙法205条1項)とは、客観的にみて不正行為が行われ得る可能性を有し、著しく選挙の公正を疑わしめるに足りる違法事実が存在する場合を指す。この場合、現実に不正行為が行われたことが立証されずとも、特段の事情のない限り、常に当該要件を充足すると解すべきである。
重要事実
青森市議会議員選挙において、特定の開票区の開票管理者が、一度適法に開票事務を終了して封印・散会した直後、予め告示された日時・場所以外において、法定の立会人数を満たさない少数の立会人の面前で封印を破棄し、投票の再調査を行った。原審は、具体的状況から不正行為の介在はないとして選挙を有効としたが、上告人がこれを争った。
事件番号: 昭和27(オ)301 / 裁判年月日: 昭和30年2月10日 / 結論: 破棄自判
投票なかばで投票箱を開き投票を取り出した違法は、常に選挙の結果に異動を及ぼす虞があり、選挙無効の原因となる。
あてはめ
本件では、開票管理者が法定の手続を無視し、非公開かつ少数者の立会のみで既に封印された投票を再調査している。かかる違法事実は、客観的に不正行為が行われ得る可能性を明らかに有し、著しく選挙の公正を疑わしめるものである。関係者の証言等によって事後的に不正がなかったと認定する手法は、関係者が口裏を合わせれば不正が表面化しないという不都合を招き、選挙の公正に対する疑惑を解消し得ない。したがって、かかる重大な手続違背があれば、現実に不正が行われたか否かにかかわらず、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるといえる。
結論
本件の再調査は公職選挙法の規定に違反し、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に該当するため、当該開票区における選挙は無効である。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続的違法が選挙の公正を外観上著しく損なうほど重大な場合には、個別具体的な得票数への影響(算術的な異動の可能性)の立証を待たずして無効原因を認めるという判断枠組みを示した。実務上は、開票・集計プロセスにおける公開性・公正性の担保が極めて重視されることを示す射程の長い判例である。
事件番号: 昭和31(オ)729 / 裁判年月日: 昭和31年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、投票用紙に記載された氏名等が候補者の誰を指すかにつき、客観的な記載内容のみならず証拠に基づき合理的に推認できる場合には、当該投票は有効と解される。 第1 事案の概要:上告人は、本件選挙における特定の係争投票について、その記載内容から候補者を特定できない等の理由…
事件番号: 昭和35(オ)677 / 裁判年月日: 昭和35年9月22日 / 結論: 棄却
代理投票が投票管理者に対する適法な申請なくして行なわれた違法があつても、補助者一名が選挙人に代つて投票用紙に候補者の氏名を記載し他の補助者がこれに立ち会い、選挙人の指示する候補者の氏名を記載したものと認められる以上、右違法によつて選挙を無効とすべきではない。
事件番号: 昭和39(行ツ)16 / 裁判年月日: 昭和39年12月10日 / 結論: 破棄自判
一 市議会議員選挙において、公職選挙法第一七三条および第一七四条(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)の規定による候補者の氏名および党派別掲示に一候補者の所属政党を無所属と誤記した違法は、原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいても、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものと解すべきである。 二 選挙訴訟の係…
事件番号: 昭和32(オ)370 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票包を開いて改めて封印した事実や参観人が柵を乗り越えて入場した事実は、直ちに公職選挙法上の選挙規定違反とはいえず、また選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるとも認められない。 第1 事案の概要:本件選挙において、一度封印された投票包を開封した上で改めて封印し直した事実、および選挙の参観人が会場の柵…