控訴審判決が控訴の適否(控訴期間遵守の如何)に関する判断を示さなかつたことが違法でないとされた事例
判旨
金銭借用証書の形式で作成された書面であっても、実質が他人の債務に対する重畳的債務引受およびその担保のための抵当権設定であれば、当該実態に基づいて権利義務関係を判断すべきである。訴訟手続において、控訴の不適法に関する抗弁が撤回された場合には、裁判所はその適否について判断を要しない。
問題の所在(論点)
1. 借用証書の形式で作成された債務引受契約の効力および実体関係の認定。2. 控訴不適法の抗弁が撤回された場合に、原審がその適否を判断しなかったことの適否。
規範
契約の性質および成立事由は、書面の形式的文言のみならず、作成の経緯、原因となった債権債務関係、および当事者の真意を総合して判断されるべきである。また、訴訟上の抗弁が適法に撤回された場合、裁判所には当該事項に対する判断の必要性が消滅する。
重要事実
上告人(被告)は、D社の代表取締役として、E社に対するD社の現在および将来の取引上の債務(130万円を限度)について、個人として重畳的債務引受を行い、その担保として自己所有の建物に抵当権を設定した。その際、便宜上「130万円の単純な借用証書」の形式で書面を授受した。その後、E社は当該債務に基づき抵当権を実行し、建物の競売を申請した。上告人は、借入金証書の形式に基づき実際の貸金関係の存否等を争ったほか、控訴が不適法であると抗弁したが、原審の口頭弁論期日において控訴不適法の抗弁を撤回した。
あてはめ
1. 実体関係について、上告人は個人としてD社の債務を重畳的に引き受ける合意をしており、書面が借用証書の形をとっていても、それは引受債務を担保するための形式にすぎない。2. 当時の取引残高や残存債権(約100万円超)の事実に照らせば、債務引受の合意および抵当権設定の事実は証拠に基づき適法に認められる。3. 手続面では、上告人の代理人が原審で「控訴不適法の抗弁を撤回する」旨を陳述しており、信義則上または処分権主義の観点から、原審が判断を示さずとも判断遺脱には当たらない。
事件番号: 昭和52(オ)595 / 裁判年月日: 昭和54年4月17日 / 結論: 破棄差戻
登記が偽造文書による登記申請に基づいてされた場合に登記義務者において登記の無効を主張することができないものというためには、その登記の記載が実体的法律関係に符合し、かつ、登記義務者においてその登記を拒みうる特段の事情がないというだけでなく、登記権利者において当該登記申請が適法であると信ずるにつき正当の事由があることを要す…
結論
本件債務引受および抵当権設定は有効であり、実体と異なる書面形式は結論を左右しない。また、撤回された抗弁について判断を示す必要はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
契約書の文言と実態が異なる場合の事実認定の在り方を示す。答案上は、書面の形式に拘泥せず当事者の合理的意思解釈を行う際の根拠となる。また、訴訟上の撤回の効果として、判断の必要性が消滅することを確認する際にも活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)285 / 裁判年月日: 昭和34年9月22日 / 結論: 棄却
競売手続の無効を原因として現在の法律関係の存否確認を求めることなく単に右競売手続自体の無効確認を求めることは許されない。
事件番号: 昭和35(オ)174 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において権利金の授受や書面上の「地上権」との記載があっても、他の反対証拠によりその法的性質が否定される場合には、地上権設定契約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の先代との間で、土地の利用に関する契約が締結された。その際、作成された証書(乙第2号証)には「地…
事件番号: 昭和35(オ)234 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
甲乙丙三棟の建物を所有する債務者が、未登記の甲建物の所有権保存登記をなすべく司法書士に委任したところ、甲建物を主たる建物、乙丙建物を付属建物と表示する登記がなされ、次いで、債権者の手により甲乙丙建物を目的物とする抵当権設定登記が経由されたのに対し、抵当権設定契約の不存在を理由として右抵当権設定登記の抹消登記手続を請求す…
事件番号: 昭和25(オ)104 / 裁判年月日: 昭和25年10月24日 / 結論: 棄却
登記されない抵当権であつても、当事者間においては、権利実行の要件を備えるかぎり、競売法の規定するところに従い、抵当権の実行による競売手続を有効に行い得るものである。